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請求書の原本を電子化する方法は?正しく理解して罰則に気を付けよう

請求書の原本を電子化する方法は?正しく理解して罰則に気を付けよう

公開日:2023年2月15日 更新日:2024年2月16日

昨今、テレワークの導入や業務の効率化を目指して請求書の電子化を進める企業が増えています。請求書の電子化は単に紙の書類をスキャンするだけでは不十分です。今回は請求書の原本を電子化する具体的な方法について紹介します。さらに、電子化した請求書に必要な情報や適切な管理方法についても確認しましょう。メリットや注意点も含めて理解を深め、導入の可否を検討してください。

請求書の電子化は法的に可能なのか

請求書の電子化は2022年1月1日の法改正により、法的に認められる範囲が広がりました。電子データで作られた請求書だけでなく紙で作られた請求書も電子化していいか、以下で詳しく解説します。

PDFなどの電子化された請求書は有効

結論から言えば、PDFを始めとした電子データで請求書を発行することは法律上問題ありません。電子取引を始めるときにも税務署に特別な書類を提出する必要はないので、環境さえ整えばいつでも始めることができます。送信側(請求する側)は、実際に発行する前に受信側(請求される側)が電子請求書に対応できるか確認を取りましょう。電子請求書は一定の要件をクリアすれば紙に印刷せずデータのまま保存ができます。

請求書の電子化が増えている理由

近年、請求書を始めとした証憑書類を電子データでやり取りするケースが増えています。電子化が進む主な理由を箇条書きでまとめました。

・業務を効率化するため
証憑書類など日常的に多くの量を扱う書類では管理や郵送に決して小さくない手間とコストがかかります。反面、データでのやり取りであれば場所も取らず、先方への送信もワンクリックで済むでしょう。電子データのまま保存すれば、検索性の向上にもつながります。加えて、修正する際も一から訂正しなくてはいけない紙と違ってデータであれば更新も簡単です。授受した紙をデータ入力する作業も省けます。

・テレワークが進んだため
新型コロナウイルスの流行により、企業の一部では在宅で勤務するテレワークが進みました。もし紙で請求書をやり取りしていた場合、確認するには定期的に出勤しなければなりません。

・災害などによる紛失リスク対策
万一会社が災害に遭った場合でも、事業を継続できる体制を整えておくことが重要です。経理部門では会計処理に関する重要な書類が多く保管されています。災害時に書類が紛失あるいは損失してしまったら、業務が滞ってしまう可能性があります。請求書などの証憑書類をデータで保管しておけば、災害時でも紛失や損失のリスクを防止することが可能です。

・紙を使わないことによる環境への配慮
現在では、多くの企業が環境問題に積極的に取り組んでいます。できるだけ紙を使わないことも、環境保全につなげる一つの方法です。請求書などの書類を電子データでやり取りすれば、書類の授受や保管に紙を一切使わずに済みます。大量に必要としていた紙を一気に削減できるでしょう。電子データの請求書であれば、インターネット環境と適切なセキュリティがあればどこでも送付や受領ができます。こうした特徴から、請求書など証憑書類の電子化は今後も進むと考えられます。

紙の原本を電子化して保存することも可能

電子帳簿保存法の改正により、もともと電子データで作成された請求書だけでなく紙で作られた請求書をスキャンして保存することもできるようになりました。請求書は社内だけでなく取引先も関わる書類です。このことから、従来の保存法下ではせっかく電子請求書を導入しても、取引先が紙取引のままであればそのまま紙で原本を保管する必要がありました。しかし2022年1月1日に改正があり、紙の請求書を電子保管する場合も税務署の事前承認を受ける必要がなくなりました。一定の要件さえ守れば、保管のスペースを確保せずとも多くの請求書を扱えるでしょう。電子化のための詳しい条件などは後ほど解説します。

請求書の原本を電子化する方法

紙で送られた請求書(原本)を電子化する場合、いくつか方法があります。最も一般的な方法はスキャナで保存するやり方です。ここでいうスキャナはスキャニング装置だけではなく、解像度と色調の基準を満たせるようであればデジタルカメラやスマートフォンといった撮影装置でも問題ありません。このとき、取り込んだデータは解像度など基準を満たしていないものは請求書として認められません。文字が読み取れない、グレースケールで撮影するなどのミスを起こさないよう、以下の表で要件を確認しましょう。

入力装置 解像度や色調の条件を満たせるもの。スキャナの他、デジタルカメラ、スマートフォンなど
解像度 200dpi以上
色調 カラー画像(請求書など、資金や物の流れに直結する重要書類の場合)

請求書原本の保存に関する要件の緩和

電子帳簿保存法は1998年7月に施行されました。当時はまだ電子データでのやり取りが今ほど普及しておらず、電子取引にも多くの制限が設けられていました。2022年1月の改正による大きな4つの変化を以下で確認しましょう。

事前承認制度の廃止

導入のハードルを大きく下げた改正が事前承認制度の廃止です。改正前の電子帳簿保存法では、電子データの保存を始める3カ月以上前に税務署長にその旨を届け出る必要がありました。制度を整え、取引先から了承を得た場合でも計画から実働までに数カ月~1年近くかかることも珍しくありませんでした。しかし改正によってこの事前承認制度は廃止され、現在では導入を決めたその日からデータの請求書といった電子帳簿を保存できます。電子化の根本を成す部分にすぐ着手できるようになったことから、電子保存の導入は今後ますます進むと考えられます。

適正事務処理要件の廃止

適正事務処理要件とは、電子化された請求書を適切に保存するための3つの項目です。改正前の電子帳簿保存法では以下の3点を守る必要がありましたが、改正によって撤廃されました。

・相互けん制:書類の電子化作業を必ず2人以上で行う
・定期検査:原本と電子データを年に1回以上照らし合わせる
・改善体制:不備があった場合すぐに修正できる体制の整備

上記は書類の正当性を維持するために大事な作業でしたが、時間や手間がかかるという難点がありました。電子化の技術向上や電子帳簿の需要が高まったこともあり、政府も過剰な確認業務の廃止を認めました。

タイムスタンプの付与

電子化した請求書には必ずタイムスタンプを付与しないといけません。タイムスタンプとは電子データと時刻を組み合わせてできた証明情報のことです。タイムスタンプを付与することで、以下の2点が証明できます。

・付与の時刻に書類が存在していたこと
・付与されて以降書類が改ざんされていないこと

電子帳簿保存法の改正後はタイムスタンプに関する要件が緩和されました。例えば電子データを訂正・削除した場合に履歴を残すこと、一定の入力期間内にシステムに打ち込むことなどの要件を満たせば、タイムスタンプを押す必要はありません。

検索機能を備えること

電子化した書類はデータを整理し、検索できるようにしなければなりません。もし不備があったときに国税庁などがスムーズに当該取引を見つけるための処置です。改正前は取引先の内容や金額だけでなく発生日や勘定科目など複数の項目が求められていたため、データの作成も大変でした。改正によって、必要な検索要件が取引年月日・取引金額・取引先の3つだけと大幅に減少しました。ただし、これは開示要請があったときに一括でデータをダウンロードし譲渡できる場合に限ります。もしシステム上ダウンロード出力が難しい場合、改正前と同じように範囲指定や条件を組み合わせて検索する機能を備えなければなりません。

請求書の原本を電子化するメリット

請求書の原本を電子化した場合、発行側だけでなく受取側にもメリットがあります。双方の利点を理解し、スムーズな導入につなげましょう。

請求側のメリット

請求側の大きなメリットはレスポンスの向上です。従来の紙請求書では発行から郵送にどうしても時間がかかりましたが、電子請求書であれば作成してワンクリックで先方に書類を送れます。さらに封入や郵送にかかる作業時間も削減できるので、時間コストを大幅に減らせる点もメリットです。また、紙の請求書を発行する際に自分や事務の社員が出社しなければいけない企業も存在します。電子データであれば自宅や外部の環境でも作成・送付ができるため、在宅勤務やテレワークといった新しい働き方にも対応できるでしょう。

受取側のメリット

素早いレスポンスは請求側だけでなく受取側にもメリットがあります。例えば決済の都合上急いで請求書を送ってほしいとき、電子データの送受信に対応していればすぐに請求書を受け取れるでしょう。また保管の際もプリントアウトの手間が不要になったため保管場所や作業時間を削減できます。エクセルファイルや管理システムに請求書の情報を記録すれば、後から見返したり決裁書類を作ったりする際も以前と比べて手間がかからないでしょう。

請求書原本を電子化する際のポイント

請求書の原本はただスキャンするだけでは効力のある書類とは認められません。保管の際にも適切なセキュリティがなければ情報が漏洩してしまう危険性があります。請求書の原本を電子化する際のポイントを確認しましょう。

請求書の押印

電子請求書の場合、押印は基本的に不要です。もし会社の規定などで必要な場合は、以下の対処法を参考にしてください。

・電子印鑑を利用する
電子印鑑とはデータに押せる印鑑のことです。フリーツールや印鑑ショップのサービスを利用して作るほか、紙の印影を自分でデータ化する方法もあります。

・電子請求書に限り押印を不要とする
社内規定を変更する必要があるため、導入の可否については社内でよく検討をおすすめします。

・タイムスタンプと同時に電子印鑑が押せるシステムを使う
一部の企業では紙の請求書にも押印を付与していますが、法律上請求書には押印は不要です。電子請求書の導入に合わせ、押印の廃止や削減も検討してはいかがでしょうか。

システムの導入

帳票管理システムを活用することで、検索要件の設定やデータの整理といった電子化に必要な作業を肩代わりしてもらえます。導入時は多少の手間がかかりますが、一度データを入力してしまえば再確認や検索が容易にできるでしょう。入力時の計算ミスも事前に弾いてくれる上、万が一エラーが出た場合も発生個所を簡単に特定できます。初期費用やランニングコストはかかりますが、紙で扱うよりも作業を大幅に効率化できるでしょう。さらに、クラウド型のシステムであればオフィスの外からでも証憑書類にアクセスできます。ほとんどの帳票管理システムは社外からのアクセス制限やデータの暗号化など、セキュリティ機能を搭載しているので、外部から閲覧したことによる情報漏洩の心配も減らせます。

セキュリティ対策

請求書を始めとした証憑書類は会社の経営に関わる重大な書類ですので、電子化する際は徹底したセキュリティ対策を取る必要があります。電子データに関するセキュリティリスクと、その対策についてまとめました。

・データそのものの損壊・紛失
セキュリティポリシーの見直しや、社員教育の徹底(例:USBの持ち出し禁止、実際の漏洩事例を元にしたケーススタディなど)

・外部からの悪意あるアクセスによる情報漏洩
認証機能の強化(パスワードや2段階認証の設定、アクセス権限の付与)上記を踏まえ、定期的な点検と再対策が重要です。例えば定期的にアクセスログを確認して不正なアクセスや情報の流出があるか確かめる、セミナーを開催し社員のリテラシー向上に努めるなどが有効です。

請求書の原本を電子化する際の注意点

請求書を電子化する際は、導入時と運用時にそれぞれ注意したい点があります。トラブルなく移行を行うため、社内だけでなく社外とも連携を取りながら進めましょう。以下で主な注意点を紹介します。

業務フローの見直しが必要になる

電子データは紙の請求書と単純に置き換えられるものではありません。大きな部分では捺印や封入の作業が減ることで、請求書の作成から発送までのステップも減少するといったことが挙げられます。従来のフローでは請求書の扱いは経理部門が一手に引き受けていたとしても、電子化によって担当者が直接請求書を作成するケースも考えられます。電子化の詳細や、請求書の制作方法など経理以外の社員も知識を身に付ける必要があるでしょう。導入後の業務フローを事前に模索すると同時に、早いうちから担当者への周知や研修を始めることが大切です。

取引先の理解を得る必要がある

請求書の電子化は社内だけでは完結しません。取引先の理解を事前に得ることは鉄則です。合意を得る流れとしては、まず導入の目途が立った時点で案内状を送付しましょう。実際に請求書を送ったり受け取ったりする際に迷わないよう、こちらから事前にやり方をアナウンスするとスムーズです。導入に難色を示す取引先が出た場合は、やり方を変更することで迷惑をかけてしまうことを詫びると同時に、電子化のメリットを説きましょう。相手にも利があることを理解してもらえれば心理的なハードルが下がります。日頃から信頼関係を構築するとともに、取引先の懸念や不安にも応えられるようにしましょう。

保存要件を満たさない場合は罰則がある

電子帳簿保存法であらかじめ示された基準を満たせない場合、状況によっては罰則を科される危険性があります。具体的な罰則は以下のとおりです。

・青色申告の承認取り消し
帳簿書類が提出できないと、最悪の場合は青色申告の承認が取り消される可能性があります。帳簿データは求めに応じてすぐにダウンロード・提出できるよう、日頃からやり方を確認しておきましょう。

・追徴課税や推計課税
悪質な電子データの改ざんや隠ぺいが見られた場合、通常の35%よりも重い追徴課税を科される可能性があります。意図的でなかったとしても重大な不備があると推計課税がかかるケースもあるので、注意しましょう。

・100万円以下の過料
あまりにも書類管理がずさんな場合、電子帳簿保存法だけでなく会社法の規定にも抵触するおそれがあります。会社法に違反した場合は上記の内容に加えて100万円以下の過料が科されるケースもあります。すぐにバレなかったとしても、帳簿に関する違反は国税庁が常に目を光らせています。ルールを知らなかったでは済まされないため、電子化の導入前からしっかりと確認しておきましょう。

【企業事例:ブラザー販売株式会社様】請求業務の電子化で作業時間を約500分➡約130分へ削減!

コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』を導入したブラザー販売株式会社様では、電子帳簿保存法の対応に合わせ、請求書や請求関連明細書などの郵送作業を自動メール送信の電子化に切り替えることで効率化を図りました。その結果、作業時間の約70%、年間費用の約50%など大幅なコストカットが実現しました。

誤請求や誤発送が許されない状況での作業が、導入後は4営業日から1営業日ほどの短縮に成功しました。また、自動化が進んだこともあってヒューマンエラーの減少にも貢献したとお声をいただいています。

ブラザー販売株式会社様の現場から「使いやすい」という評価が導入採用の決め手となり、大きなコストカットを達成できた事例となりますので、興味のある方は以下リンクのページから資料をすぐにダウンロードいただけます。

▼導入事例【企業事例:ブラザー販売株式会社様】
月間約930件の請求関連書を効率化!作業時間の70%以上のコストカットを実現

まとめ

請求書をデータで管理することで、従来の問題点であった確認の手間や保管スペースの確保といった点を解消できます。発行・送付・管理それぞれの負荷が軽くなることで、請求書に関わる作業を大幅に効率化できるでしょう。ただし、請求書をデータで保存する場合は電子帳簿保存法に基づいた要件を満たさなければなりません。違反度合いがあまりにもひどい場合は罰則が科される危険性がありますので、導入の際は事前の下調べと準備が肝心です。電子化を行うためのシステム担当者や、電子化するにあたって相談できる相手を確保しておきましょう。帳票書類を送付したり保管したりする際は、電子帳簿保存法に対応したシステムを利用するとヒューマンエラーを減らせます。コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』なら、請求書などの帳票書類の送付をWeb上でスムーズに行えます。さらにアーカイブ機能は電子帳簿保存法にも対応していますので、安心して情報を管理できます。経理業務の電子化を進めたい場合はぜひご相談ください。

@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)

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