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役員報酬と給与の違いとは?役員報酬を損金とする際の注意点など解説

役員報酬と給与の違いとは?役員報酬を損金とする際の注意点など解説

公開日:2023年2月16日 更新日:2023年10月18日

役員報酬とは、法人の取締役や会計参与、監査役などの役員に支払われる報酬のことです。役員報酬は、従業員に支払う給与とは取り扱いが異なります。現場や部署の管理をする中で、役員報酬に関する業務について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

役員報酬の金額を決める際には、一定のルールを守る必要があります。今回は役員報酬について給与との違いや金額の決め方、役員報酬を損金とする際の注意点などを解説します。

役員報酬とは

役員報酬とは、税務上の会社の役員に対して支払われる報酬です。経営陣として役目を果たす「取締役」「会計参与」「監査役」「執行役又は会計監査人」などといった役員が対象になります。社内外を問わず、役員に支給される報酬が該当し、支給頻度が少ない場合に限らず役員報酬に該当します。

役員報酬と従業員給与の違いとは

役員報酬と従業員給与は、そもそも日本の税制上でまったくの別物として取り扱われています。支払い条件や残業代、社会保険、最低賃金などの細かな違いもあるため注意が必要です。ここでは役員報酬と従業員給与の違いを解説します。

税制上の取り扱いに違いがある

役員報酬と従業員給与は税制上の取り扱いに違いがあります。役員報酬とは、取締役や監査役など役員に対して支払われる報酬です。一方、給与は会社と雇用関係にある従業員に対して支払われます。給与は全額損金として算入できますが、役員報酬の金額を決める際には税務上のルールを守る必要があります。無条件で損金として算入できるようにしてしまうと、役員報酬を不当に高く設定し、簡単に節税ができるようになってしまうからです。損金扱いになる役員報酬は定期同額給与や事前確定届出給与などの一部に限られます。なお損金とは、法律における会社の利益から差し引けるお金のことです。財務会計上での費用と同じような意味で使われます。

役員報酬と給与の違い

役員報酬と従業員の給与には、支払い条件や残業代、社会保険、最低賃金などに違いがあります。細かな違いは以下のとおりです。

役員報酬 給与
勘定科目 役員報酬 給料賃金・給与手当・給与など
支払い条件 なし あり(勤務実績に応じた支払い)
残業代 なし あり
健康保険・年金保険 あり(非常勤は加入義務なし) あり
雇用保険・労災保険 なし あり
最低賃金 なし あり
日割り計算 不可

 

役員報酬には、一般的な従業員に認められるような残業代、健康保険・年金保険、雇用保険・労災保険、最低賃金などの適用がありません。ただし給与のように、勤務実績に応じた支払いをする必要がないため、比較的柔軟に報酬額を決められます。見落としがちなポイントですが、役員報酬は日割り計算ができないので注意しましょう。

役員の種類とそれぞれの役割

役員とは会社の経営や重要な意思決定を行う人のことです。会社法では、取締役、会計参与、監査役のことを指します。さらに会社法施行規則では、役員等として執行役や会計監査役も含まれます。一口に役員といっても、さまざまな人が該当する可能性があるため、あらかじめ細かい意味を確認しておきましょう。ここではそれぞれの役割を解説します。

取締役

取締役とは、会社経営において重要な意思決定をする人のことを指します。最低1名以上、取締役会設置会社では3名以上選出されることが基本です。規模が大きい会社では、取締役が複数人存在しその中から代表取締役が選出されます。なお社長と代表取締役はイコールではありません。取締役が社長、代表取締役が会長といったケースもあります。社長の肩書きは、あくまでも会社内の役職の話であり、会社法で規定されている取締役とは別物です。

会計参与

会計参与とは、取締役や執行役と連携しつつ貸借対照表や事業報告書などを作成する機関です。税理士や税理士法人、公認会計士、監査法人などが業務の担い手となります。逆にいえば、それ以外の人や機関は会計参与に就任できません。会計参与は、株主総会へ出席し取締役の違法行為に対して報告や意見をする権限を持ちます。ただし監査役とは異なり、監査権限を持っているわけではありません。会社法施行後に認められた比較的新しい制度です。

監査役

監査役は、取締役や会計参与の職務を監査する役割を担います。第三者としての立場で、代表取締役による経営判断や不正を防ぐことが主な目的です。会社法によれば監査役の任期は原則4年です。ただし株式の譲渡上限がある非公開会社であれば、定款によって10年までの延長が可能になるなど、会社の形態によって若干異なります。上場企業は、株主などのステークホルダーとの関係がとても重要です。監査役を設置することで経営の健全性を担保できるため、投資家や株主からの信頼を得やすくなるといったメリットがあります。

執行役または会計監査人

執行役とは、指名委員会設置会社が取締役会で決めた方針に従って、業務を遂行する役割を担います。経営の透明性を担保するために、取締役と執行役が分離されています。なお執行役員は役職の一つであり執行役員とは別物です。会計監査人は、大企業および委員会等設置会社で計算書類などの会計監査を行う機関のことです。会計監査人は公認会計士または監査法人が行います。執行役と会計監査人は、会社法上の役員ではなく役員等の扱いとなります。

役員報酬の決め方

役員報酬の決め方は、定款や株主総会の決議によって定めるのが原則です。会社設立から3カ月以内に決める必要があり、期間内に決めなかった場合は、損金として算入できません。ここでは、役員報酬の決め方に関する基本的なルールを解説します。

役員報酬を決める際の流れ

役員報酬は会社法や法人税法により「定款または株主総会の決議によって定める」とされています。ただし定款ではなく、株主総会で決めることが一般的です。そもそも定款に役員報酬に関する事項が記載されていない会社もあります。まず株主総会で役員報酬の総額を決めます。その後、取締役会で役員ごとに内訳を決めるのが基本的な流れです。しかし会社によっては取締役会がないところもあります。取締役会がない会社では取締役が役員報酬を決定します。なお役員報酬を損金として参入するためには、根拠となる資料が必要です。株主総会や取締役会などで役員報酬を決定する際は、議事録を作成しすぐに参照できるよう保存しておきましょう。

役員報酬を決める時期

役員報酬は、会社設立から3カ月以内に決めなければなりません。3カ月以内に決めなければ損金に算入できなくなります。ただしこれは会社設立1年目の場合であり、役員報酬は事業年度ごとに決められます。役員報酬を決めた場合、1年間はその額で固定です。ただし、さまざまな事情によって役員報酬を変更しなければならない場合もあるでしょう。役員報酬を変更する場合は、事業年度開始(期首)から3カ月以内に変更する必要があります。

役員報酬を決める際のポイント・注意点

役員報酬を決める際は、どれくらいの収益になるのかをあらかじめ想定しておく必要があります。また報酬と切っても切れない関係である税金も考慮しておかなければなりません。ここでは、役員報酬を決める際のポイント・注意点を解説します。

年間の収益を予測する

まず重要になってくるのが、会社の年間の収益を予想しておくことです。役員報酬を決める際は、会社の売上を予測し、粗利や固定費を算出した上で適切な金額にする必要があります。役員報酬は毎月固定での支払いです。収益に対して役員報酬が高すぎると、会社に利益が残らず資金繰りが苦しくなってしまうおそれがあります。特に期首から3カ月を過ぎると、役員報酬の変更が不可能になるため十分注意しましょう。年間の収益を予想するためには、前年度の経営・財務の状態を確認することがおすすめです。会社設立したばかりであり、参考にできるような資料がない場合は、ひとまず無謀な金額を設定しないように心がけましょう。

納税額とのバランスを考える

納税額とのバランスを考えることも重要です。会社として納める納税額は、会社の利益に応じて決まります。つまり役員報酬が高ければ利益が減り、その分納税額も少なくなる仕組みです。しかし納税をする主体は会社(法人)だけではありません。会社が利益に応じて法人税を支払うように役員個人も自らの所得額に応じて、所得税や住民税などの税金を支払う必要があります。もし役員報酬が高く設定されている場合、個人の所得が増えるため、それに応じて個人で納めなければならない所得税や住民税が高くなります。会社と役員個人、それぞれの納税額のバランスを確認しつつ、最適な役員報酬を決定しましょう。

役員報酬の相場を把握する

役員報酬の相場を把握しておくことも、意識しておきたいポイントです。同業・同規模の他社の相場と比較して、高すぎない金額に設定することが基本になります。役員報酬と資本金には、正の相関関係があります。つまり、会社の資本金が大きいほど、役員報酬も高くなるという傾向です。国税庁の「民間給与実態統計調査」(2021年)のデータ(※)を元に、役員報酬の平均額を確認してみましょう。

男性 女性
資本金2,000万円未満 691万9,000円 421万7,000円
2,000万円以上 1,030万6,000円 582万6,000円
5,000万円以上 939万4,000円 463万3,000円
1億円以上 1,092万3,000円 544万1,000円
10億円以上 1,686万1,000円 734万7,000円

※出典:国税庁.「民間給与実態統計調査」.(参照 2023-1-18)

上記を見ても分かるように、資本金が高くなるにつれて役員報酬も高くなっています。また役員報酬の金額に男女差があることもポイントです。ただし社長の妻が役員報酬をもらっているといったケースもあるため、現状では単純比較が難しいといえます。

役員報酬で確定申告が必要なケース

下記に当てはまる場合は原則として確定申告をする必要があります。
・2ヶ所以上から役員報酬を受け取っている場合
・1ヶ所から給与を受け取っている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超えている場合
・同族会社の役員などで、その同族会社以外に貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている場合
・災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている場合
・源泉徴収義務のない者から給与などを受け取っている場合
・退職所得について正規の方法で税額を計算した際に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる場合

損金として算入できる役員報酬の種類

損金として参入できる役員報酬には、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与の3種類があります。それぞれまったく異なる特徴を持っているため、それぞれの違いをよく理解しておくのが重要です。ここでは、損金扱いにできる役員報酬の種類を紹介します。

定期同額給与

定期同額給与とは、事業年度中に毎月同じ金額が支払われる報酬のことです。例えば12月を決算月としている会社であれば、事業年度開始の1月から12月にかけて、同じ額の役員報酬が支払われることになります。毎月一定額を支払うことが条件であり、税務署への届出は不要です。先ほども触れたように、会社設立時は設立後3カ月以内に役員報酬の金額を決めておく必要があります。定期同額給与を増額あるいは減額する場合は、事業年度開始日から3カ月以内に開催された株主総会などの決議が必要です。また役員の地位の変更などによる臨時的な改定、業績悪化による改定(減額のみ)も認められています。

事前確定届出給与

事前確定届出給与は、事前に税務署に届出をし所定の時期に一定額の報酬を支給する制度です。役員賞与は原則として損金として認められません。しかし事前に納税地の税務署長へ届け出をすれば、損金としての算入が可能です。「事前確定届出給与に関する届出書」に記載した、支給対象者、支給金額、支給日どおりに支払うのが条件です。届出書の期限は、株主総会などでの決議から1カ月以内、会計期間開始日から4カ月以内のうち早い方となります。もし事前確定届出給与が不当に高いと判断された場合、全体の額のうち適正部分のみが損金に参入されます。定期同額給与とは異なり、税務署への届出が必要など少し条件が厳しいため注意しましょう。

業績連動給与

業績連動給与は、有価証券報告書に記載された指標を元に算出される役員報酬になります。もっと簡単にいえば、会社の利益に応じて役員報酬が決まる制度です。平成29年度の税制改正によって対象が広がり、非同族会社や非同族会社の完全子会社である同族会社に認められています。業績連動給与を損金として算入するには、いくつかの要件があります。まず計算方法に客観性が認められることです。さらに「同族会社以外であること」「有価証券報告書に計算方法を記載・解除していること」などの条件があります。上記から分かるように、業績連動給与は定期同額給与や事前確定届出給与と比べて条件が厳しい制度です。手続きも複雑であるため、利用している企業は少ないとされています。

役員報酬を損金とする場合の注意点

役員報酬を損金とする場合は、報酬額を期限内に決めておきましょう。期限外に変更しても損金としては扱われず、課税対象となります。ここでは、役員報酬を損金とする場合の注意点を解説します。

役員報酬額を期限内に決める

役員報酬額は期限内に決めておきましょう。前述のとおり、役員報酬を損金とする場合は、会社設立日または事業年度開始日から3カ月以内であることが条件です。期限内に役員報酬を決定しないと、損金に算入できなくなります。また役員報酬の金額を変更できる期間は、決算後3カ月以内と決められています。期限内の変更であれば全額損金に算入できるため、もし変更が想定される場合は、なるべく早めに話を進めておくことがおすすめです。先ほども触れたように、役員報酬額を変更するためには、株主総会の決議などが必要になります。

期限外に変更した場合は損金に算入できない

期限が過ぎてから役員報酬を増額した場合、増額した分は損金不算入として扱われ、法人税の課税対象となるので注意しましょう。さらに役員報酬が増額されると、法人税だけでなく役員個人にかかる所得税も増えます。一方、期限が過ぎてから減額した場合、減額前の超過分を損金に算入できなくなります。減額前の超過分には、法人税と所得税がかかるので注意しましょう。ただし定期同額給与の項目でも触れたように、期限外に役員報酬を変更した場合でも例外的に損金として認められるケースがあります。例えば役員のポジションに変更があるような臨時改定事由や、資金繰りの悪化などによる業績悪化事由です。これらのケースに該当すれば、超過分が損金に参入できないというペナルティは発生しません。

まとめ

役員報酬は給与とは異なり、一定のルールを守らないと損金として算入できません。役員報酬の金額を考える際は、定款または株主総会の決議で会社設立から3カ月以内に決める必要があります。期間外に報酬額を変更しても、損金として算入できないので注意が必要です。経理部門では、伝票処理や経費精算、給与計算など日々多くの業務をこなさなければならないため、業務の効率化が求められています。業務の効率化を進めるなら、コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』の導入がおすすめです。『@Tovas』は、請求書などの帳票の配信をWeb上で行えるため、請求業務を無理なく効率化できます。業務効率化を検討中でしたら、ぜひ導入をご検討ください。

@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)

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