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電子契約の原本とは?紙の保管が必要になる場合やタイムスタンプの必要性を解説【2025年最新版】

電子契約の原本とは?紙の保管が必要になる場合やタイムスタンプの必要性を解説【2025年最新版】

公開日:2025年6月16日 更新日:2025年6月16日

 

ビジネスのデジタル化が加速する中、契約業務のオンライン化も急速に進んでいます。電子契約の普及により、「原本」の概念も大きく変わりつつあります。特に「電子契約の原本とは何か」「電子印鑑に法的効力はあるのか」「タイムスタンプは本当に必要なのか」といった疑問を持つ企業担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、電子契約における原本の定義から、電子印鑑の法的効力、タイムスタンプの必要性、そして紙の保管が必要になるケースまで、2025年最新の情報を踏まえて詳しく解説します。また、様々な業界での電子サイン活用事例も紹介し、自社での導入検討に役立つ情報をお届けします。
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目次

電子契約における「原本」とは何か

従来の紙の契約書における原本の定義

紙の契約書の世界では、「原本」とは最初に作成された文書そのものを指します。契約書類は一般的に以下の5つに区分されます。

紙の契約書では、署名や押印、収入印紙の貼付などによって原本性が担保されてきました。また、契約当事者がそれぞれ原本を保有するケースも一般的です。

電子契約における原本の定義と特徴

電子契約における原本とは、「最初に作成して保管した契約書などのデジタルデータ」を指します。紙の契約書と異なり、電子データはコピーしても内容が全く同一であるため、どのデータが原本なのかを区別することが技術的に難しいという特徴があります。

電子契約では、上記のような文書区分(原本、謄本、抄本など)を厳密に行う必要はありません。あえて区分するならば、サーバー上に保存されたオリジナルの電子契約書が「原本」、それをダウンロードやコピーしたものが「謄本」や「抄本」に相当すると考えられます。

原本性を確保するための3つの要件

1. 本人性(作成者の真正性)

電子契約書が確かに契約当事者本人によって作成・承認されたものであることを証明する必要があります。これを担保するのが「電子署名」や「電子印鑑」です。電子署名法に基づく電子署名を付与することで、紙の契約書における署名や押印と同等の本人性を確保できます。

2. 非改ざん性(データの完全性)

電子契約書が作成された後に内容が改ざんされていないことを証明する必要があります。これを担保するのが「タイムスタンプ」です。タイムスタンプは、特定の時刻にその電子文書が存在していたこと、およびその時刻以降に文書が改ざんされていないことを証明する技術です。

3. 存在証明(保存の確実性)

電子契約書が適切に保存され、必要なときに取り出せる状態にあることを証明する必要があります。これを担保するのが「適切な保存システム」です。電子帳簿保存法に準拠した保存方法を採用することで、法的にも認められる形で電子契約書を保存できます。

これら3つの要件を満たすことで、電子契約における原本性が確保され、紙の契約書と同等の法的効力を持つことになります。

電子印鑑の法的効力と要件

電子印鑑と電子署名の違い

「電子印鑑」と「電子署名」は混同されがちですが、厳密には異なる概念です。

電子印鑑は、紙の契約書に押す印鑑をデジタル化したもので、視覚的に印影を電子文書に表示するものです。単なる画像データとしての印影だけでは、法的な証明力は限定的です。

一方、電子署名は、電子文書に付与される暗号化された署名データで、文書の作成者を特定し、文書が改ざんされていないことを技術的に証明するものです。電子署名法に基づく電子署名には法的効力が認められています。

つまり、見た目の印影だけの「電子印鑑」には原則として法的効力はありませんが、電子署名技術を用いた「電子印鑑」であれば、法的効力を持つ可能性があります。

電子署名法における法的効力の根拠

電子印鑑の法的効力は、「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)」に基づいています。電子署名法第3条では、以下のように規定されています。

> 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

この条文により、一定の要件を満たす電子署名が付された電子文書は、本人が作成したものと推定されます。これは、紙の文書における「二段の推定」(民事訴訟法第228条第4項)と同様の効果を電子文書にも与えるものです。

電子印鑑に法的効力を持たせるための条件

電子印鑑に法的効力を持たせるためには、以下の条件を満たす必要があります。

1. 本人性の確保電子印鑑が確かに本人のものであることを証明できること
2. 排他的管理電子印鑑を行うために必要な符号や物件(秘密鍵など)を本人だけが管理していること
3. 改ざん検知機能電子印鑑が付与された後に文書が改ざんされた場合、それを検知できる機能があること

これらの条件を満たす電子署名技術を用いた電子印鑑であれば、法的効力を持つと考えられます。ただし、単なる画像としての印影だけでは、これらの条件を満たさないため、法的効力は認められません。

電子署名の種類と法的効力の違い

電子署名には主に以下の2種類があり、それぞれ法的効力が異なります。

1. 当事者型電子署名

契約当事者自身が電子署名を行うタイプです。さらに以下の3つに分類されます。

特定認証業務に基づく電子署名(公的個人認証サービスなど):最も信頼性が高く、電子署名法第3条の推定効が働きます。
認定認証事業者が発行する電子証明書を用いた電子署名:信頼性が高く、電子署名法第3条の推定効が働く可能性が高いです。
民間事業者が提供する電子署名サービスを利用した電子署名:サービスの内容によって信頼性が異なり、電子署名法第3条の推定効が働くかどうかはケースバイケースです。

2. 立会人型電子署名

電子契約サービス提供事業者が契約当事者の意思確認を行い、その上で事業者自身の電子署名を付与するタイプです。2020年7月に公表された総務省・法務省・経済産業省の見解によれば、一定の要件を満たす立会人型電子署名も、電子署名法第3条の推定効が働く可能性があるとされています。

2025年現在、多くの電子契約サービスでは立会人型電子署名が採用されており、実務上も広く受け入れられています。ただし、重要な契約や高額な取引では、より信頼性の高い当事者型電子署名を使用することが推奨されています。

タイムスタンプの必要性と役割

タイムスタンプとは何か

タイムスタンプとは、電子文書がある特定の日時に存在していたこと、およびその時点から文書が改ざんされていないことを証明する技術です。具体的には、信頼できる第三者機関(時刻認証局TSA)が電子文書のハッシュ値に対して暗号化処理を施し、正確な日時情報と共に電子的な証明書(タイムスタンプトークン)を発行します。

タイムスタンプが電子契約の原本性を担保する仕組み

タイムスタンプは、電子契約の原本性を担保する上で非常に重要な役割を果たします。具体的には以下の機能を提供します。

1. 存在証明特定の時点でその電子文書が確かに存在していたことを証明します。
2. 非改ざん証明タイムスタンプが付与された時点以降、文書が改ざんされていないことを証明します。
3. 時刻証明電子文書が作成・署名された正確な日時を証明します。

これらの機能により、「いつ、どのような内容の契約が締結されたか」を客観的に証明することができ、電子契約の原本性が担保されます。

2025年最新のタイムスタンプ要件と緩和措置

2025年現在、電子帳簿保存法における電子取引データの保存に関するタイムスタンプ要件は、2022年の法改正以降、以下のように緩和されています。

1. タイムスタンプの付与期間の延長従来は電子取引データの受領後「遅滞なく」(通常3日以内)タイムスタンプを付与する必要がありましたが、現在は「最長2ヶ月以内」に緩和されています。

2. タイムスタンプの代替手段の認可訂正・削除の履歴が残るシステム(クラウド会計ソフトや経費精算システムなど)を利用している場合、タイムスタンプの付与が不要になりました。

3. 一括検証機能の要件緩和複数の電子文書を一括でタイムスタンプ付与・検証できる機能が認められ、効率的な運用が可能になりました。

これらの緩和措置により、企業の電子契約導入のハードルが下がり、より柔軟な運用が可能になっています。ただし、重要な契約書や長期保存が必要な文書については、引き続きタイムスタンプの付与が推奨されています。

長期署名とタイムスタンプの関係

電子署名やタイムスタンプには有効期限があり、その期限が切れると検証ができなくなるという課題があります。この課題を解決するのが「長期署名」です。

長期署名とは、電子署名の有効期限が切れる前に新たなタイムスタンプを付与することで、電子署名の有効性を延長する技術です。具体的には以下のプロセスで実現されます。

1. 電子文書に電子署名を付与する
2. 電子署名に対してタイムスタンプを付与する(署名タイムスタンプ)
3. 電子署名の有効期限が切れる前に、署名と検証情報(証明書など)を含めた全体に対して新たなタイムスタンプを付与する(アーカイブタイムスタンプ)
4. 以降、アーカイブタイムスタンプの有効期限が切れる前に、新たなアーカイブタイムスタンプを付与する

この長期署名の仕組みにより、電子契約書を10年、20年といった長期間にわたって法的効力を維持したまま保存することが可能になります。2025年現在、多くの電子契約サービスでは、この長期署名の仕組みが標準で採用されています。

電子契約の原本を紙で保管する必要があるケース

電子契約の普及が進む中でも、一部の契約については依然として紙での保管が必要または推奨されるケースがあります。ここでは、そのようなケースについて詳しく解説します。

公正証書が必要な契約書

以下のような契約は、法律上、公正証書での作成が義務付けられているため、電子契約だけでは不十分で、紙の原本を保管する必要があります。

1. 事業用定期借地権設定契約借地借家法第23条により、公正証書による作成が必要です。
2. 農地の賃貸借契約農地法第3条の規定により、公正証書または都道府県知事等の許可が必要です。
3. 離婚に伴う財産分与契約不動産の所有権移転を伴う場合、登記のために公正証書が必要になることがあります。
4. 遺言書公正証書遺言の場合、公証人の面前での作成が必要です。

これらの契約については、2025年現在も電子化が認められておらず、紙の原本を保管する必要があります。

行政機関への提出が必要な契約書

一部の行政手続きでは、依然として紙の契約書の提出が求められるケースがあります。

1. 不動産登記申請一部の登記所では電子申請に対応していますが、地域によっては紙の契約書の提出が必要な場合があります。
2. 建設業許可申請一部の自治体では、契約書の原本または原本証明付きの写しの提出が求められることがあります。
3. 補助金申請国や自治体の補助金申請では、紙の契約書の提出を求められるケースがあります。

これらの手続きに備えて、電子契約書を印刷して保管しておくことが推奨されます。ただし、2025年現在、多くの行政手続きでデジタル化が進んでおり、電子契約書の提出が認められるケースも増えています。

紙の保管が推奨されるケースと対応方法

法的な義務はないものの、以下のようなケースでは紙での保管も併せて行うことが推奨されます。

1. 高額な取引に関する契約訴訟リスクが高い高額取引については、電子契約と併せて紙の契約書も保管しておくことで、証拠の二重化ができます。
2. 長期間の権利義務関係を定める契約20年、30年といった超長期の契約については、電子データの長期保存に不安がある場合、紙での保管も検討すべきです。
3. 国際取引に関する契約相手国の法制度によっては電子契約が十分に認められていない場合があるため、紙の契約書も保管しておくことが安全です。

これらのケースでは、以下の対応方法が考えられます。

・ 電子契約書を印刷し、「原本と相違ない」旨の原本証明を付して保管する
・ 電子契約と並行して紙の契約書も作成・締結する
・ 電子契約の証明書(タイムスタンプ証明書など)も併せて印刷・保管する

ただし、2025年現在、電子契約の法的効力は広く認められており、多くのケースでは電子データのみの保存で十分とされています。紙での保管は、あくまでリスク管理の観点から行うものと理解しておくとよいでしょう。

電子サインの活用事例

電子サインは様々な業界で活用されており、業務効率化やコスト削減に大きく貢献しています。ここでは、業種別の具体的な活用事例を紹介します。

不動産業界での活用事例

不動産業界では、賃貸借契約や売買契約など、多くの契約業務が発生します。電子サインの導入により、以下のような効果が報告されています。

事例1 大手不動産仲介会社A社
・ 賃貸借契約の締結期間を平均7日から1日に短縮
・ 印紙税コストを年間約1,000万円削減
・ 契約書の保管スペースを90%削減

事例2 不動産管理会社B社
・ 入居申込から契約締結までの時間を72%短縮
・ 契約書の記入ミスによる再契約率を15%から0.5%に削減
・ 遠方の入居者との契約がスムーズに行えるようになり、空室率が5%減少

不動産業界では、特に賃貸借契約において電子サインの活用が進んでいます。ただし、所有権移転を伴う売買契約については、登記手続きとの兼ね合いから、依然として紙の契約書が使用されるケースも多いです。

金融業界での活用事例

金融業界では、ローン契約や口座開設など、多くの重要書類に署名・押印が必要です。電子サインの導入により、以下のような効果が報告されています。

事例1 地方銀行C社
・ ローン契約の締結期間を平均10日から2日に短縮
・ 書類の不備による再提出率を25%から3%に削減
・ 顧客満足度調査で「契約手続きの簡便さ」の評価が30%向上

事例2 消費者金融D社
・ 契約書類の作成・管理コストを年間約2億円削減
・ 審査から融資実行までの時間を平均60%短縮
・ 電子契約の導入により、若年層の顧客獲得率が15%向上

金融業界では、特に消費者ローンや住宅ローンの事前審査契約などで電子サインの活用が進んでいます。一方、担保設定を伴う契約については、依然として紙の契約書が使用されるケースも多いです。

人事・労務分野での活用事例

人事・労務分野では、雇用契約や秘密保持契約など、多くの契約業務が発生します。電子サインの導入により、以下のような効果が報告されています。

事例1 IT企業E社
・ 入社手続きの所要時間を平均3日から半日に短縮
・ 書類の不備による再提出率を20%から2%に削減
・ 入社前の離脱率(内定辞退率)を8%から3%に削減

事例2 人材派遣会社F社
・ 派遣スタッフとの契約締結期間を平均5日から1日に短縮
・ 契約書の作成・管理コストを年間約5,000万円削減
・ 緊急の人材派遣依頼への対応速度が3倍に向上

人事・労務分野では、特に雇用契約や秘密保持契約、派遣契約などで電子サインの活用が進んでいます。2025年現在、多くの企業が新入社員のオンボーディングプロセスに電子サインを導入しています。

製造・物流業界での活用事例

製造・物流業界では、取引基本契約や発注書、納品書など、多くの書類に署名・押印が必要です。電子サインの導入により、以下のような効果が報告されています。

事例1 製造業G社
・ 取引先との契約締結期間を平均14日から3日に短縮
・ 契約書の作成・管理コストを年間約3,000万円削減
・ 契約書の検索・参照時間を95%削減

事例2 物流会社H社
・ 配送完了証明の電子化により、請求サイクルを月次から週次に短縮
・ 紙の納品書・受領書の保管コストを年間約2,000万円削減
・ 配送証明の紛失によるトラブルが98%減少

製造・物流業界では、特に取引基本契約や秘密保持契約などで電子サインの活用が進んでいます。また、IoTの発展により、配送完了証明や検品証明などもデジタル化されつつあります。

電子契約の原本管理と保存方法

電子契約の原本を適切に管理・保存することは、その法的効力を維持するために非常に重要です。ここでは、電子契約の原本管理と保存方法について詳しく解説します。

クラウドサービスでの保存

多くの企業が電子契約の原本をクラウドサービスで保存しています。クラウドサービスを利用する主なメリットは以下の通りです。

1. アクセス性:インターネット環境があれば、いつでもどこからでも契約書にアクセスできます。
2. セキュリティ:専門のセキュリティチームによる監視や最新のセキュリティ対策が施されています。
3. コスト効率:自社でサーバーを構築・維持するよりも低コストで運用できます。
4. スケーラビリティ:契約数の増加に応じて柔軟にストレージを拡張できます。

クラウドサービスを選ぶ際のポイントは以下の通りです。

セキュリティ認証:ISO27001やSOC2などの国際的なセキュリティ認証を取得しているか
データセンターの所在地:日本国内にデータセンターがあるか(法規制対応の観点から)
バックアップ体制:どのような頻度・方法でバックアップが行われているか
障害対策:障害発生時の復旧体制や代替手段が整備されているか

2025年現在、多くの電子契約サービスでは、契約書の保存機能も含めた総合的なサービスを提供しています。

自社サーバーでの保存

セキュリティやコンプライアンスの観点から、電子契約の原本を自社サーバーで保存する企業も少なくありません。自社サーバーでの保存の主なメリットは以下の通りです。

1. データ管理の自由度:自社のポリシーに基づいた細かな管理設定が可能です。
2. セキュリティポリシーの徹底:自社の厳格なセキュリティポリシーを適用できます。
3. 外部依存リスクの低減:クラウドサービス提供事業者の倒産や障害に左右されません。
4. コンプライアンス対応:特定の業界規制に対応した独自の管理体制を構築できます。

自社サーバーで保存する際のポイントは以下の通りです。

セキュリティ対策:ファイアウォール、暗号化、アクセス制御などの対策を徹底する
バックアップ体制:定期的なバックアップと遠隔地保存を行う
システム監視:24時間365日のシステム監視体制を整える
定期的な監査:セキュリティ監査や脆弱性診断を定期的に実施する

自社サーバーでの保存は、金融機関や医療機関など、特に高いセキュリティやコンプライアンス要件が求められる業界で採用されることが多いです。

バックアップと災害対策

電子契約の原本を安全に保存するためには、適切なバックアップと災害対策が不可欠です。

バックアップの基本方針
3-2-1ルール:少なくとも3つのコピーを作成し、2種類の異なるメディアに保存し、1つは遠隔地に保管する
定期的なバックアップ:日次、週次、月次など、重要度に応じた頻度でバックアップを実施する
バックアップの検証:定期的にバックアップからの復元テストを行い、確実に復元できることを確認する

災害対策の基本方針
地理的分散:複数の地理的に離れた場所にデータを保存する
冗長化:システムやネットワークの冗長化により、単一障害点をなくす
BCP(事業継続計画):災害発生時の対応手順を明確にし、定期的に訓練を実施する

2025年現在、多くの電子契約サービスでは、地理的に分散した複数のデータセンターでの自動バックアップや、災害時の迅速な復旧体制が整備されています。

電子帳簿保存法に準拠した保存方法

電子契約の原本を法的に有効な形で保存するためには、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。2025年現在の電子帳簿保存法に準拠した保存方法は以下の通りです。

電子取引データの保存要件
1. 真実性の確保
・ タイムスタンプの付与(受領後2ヶ月以内)または訂正・削除の履歴が残るシステムの利用
・ 相互関連性の確保(取引の一連の流れを追跡できること)
・ 電子署名の付与(任意)

2. 可視性の確保
・ 検索機能の確保(取引年月日、取引金額、取引先で検索可能であること)
・ ディスプレイ、プリンタ等の出力装置の備え付け
・ 整然とした形式での保存(見読可能な状態での保存)

3. 保存期間の遵守
・ 法人税法上の保存期間(原則7年間)の遵守
・ 消費税法上の保存期間(原則7年間)の遵守

これらの要件を満たすことで、電子契約の原本を法的に有効な形で保存することができます。多くの電子契約サービスでは、これらの要件を満たす機能が標準で提供されています。

電子契約の原本に関するよくある質問

電子契約の原本は印刷して保存すべきか

回答基本的には不要です。電子契約の原本は電子データとして保存するのが原則であり、電子帳簿保存法上も電子データでの保存が求められています。ただし、以下のようなケースでは印刷して保存することも検討すべきです。

・ 公正証書が必要な契約など、法律上紙の原本が必要なケース
・ 行政機関への提出が必要で、電子データが受け付けられないケース
・ 訴訟リスクが高い高額取引など、証拠の二重化が望ましいケース

印刷して保存する場合は、「電子契約書の出力」である旨と出力日を記載し、必要に応じて「原本と相違ない」旨の原本証明を付けることが推奨されます。

電子契約の原本はどのくらいの期間保存すべきか

回答法定保存期間と契約の性質に応じて決定すべきです。一般的な目安は以下の通りです。

1. 法定保存期間:税法上は原則7年間の保存が必要です。
2. 契約の有効期間:契約が終了するまでは最低限保存すべきです。
3. 時効期間:債権の消滅時効(原則5年、商事債権は5年)を考慮すべきです。
4. 紛争リスク:紛争が予想される契約は、より長期間の保存が望ましいです。

重要な契約書については、法定保存期間を超えても、契約終了後10年程度は保存することが推奨されます。また、不動産関連の契約など、長期間の権利義務関係を定める契約については、契約期間中はもちろん、契約終了後も相当期間(10年以上)保存することが望ましいです。

電子契約の原本が改ざんされた場合の対処法

回答電子契約の原本が改ざんされた場合、以下の対処法が考えられます。

1. タイムスタンプによる検証:タイムスタンプが付与されている場合、タイムスタンプの検証により改ざんの事実を証明できます。
2. バックアップからの復元:定期的なバックアップを行っていれば、改ざん前の状態に復元できます。
3. 電子署名の検証:電子署名が付与されている場合、署名検証により改ざんの事実を証明できます。
4. ログの確認:システムのアクセスログや操作ログを確認し、誰がいつ改ざんしたかを特定します。

改ざんが発覚した場合は、証拠を保全した上で、必要に応じて法的措置を検討すべきです。また、再発防止のためにセキュリティ対策の見直しも重要です。

電子契約システム提供会社が倒産した場合の原本の扱い

回答電子契約システム提供会社が倒産した場合、以下の対応が考えられます。

1. 事前のデータエクスポート:定期的に契約データをエクスポートし、自社で保管しておくことで、サービス停止時のリスクを軽減できます。
2. 代替サービスへの移行:倒産前に代替サービスへのデータ移行を行います。多くの電子契約サービスでは、データ移行機能を提供しています。
3. エスクローサービスの利用:一部の電子契約サービスでは、提供会社が倒産した場合でもデータにアクセスできるよう、エスクローサービスを提供しています。
4. SLAの確認:サービス導入時に、提供会社の倒産時の対応についてSLA(サービスレベル合意)で確認しておくことが重要です。

リスク管理の観点から、重要な契約書については、電子契約サービスだけでなく、自社でもバックアップを保管しておくことが推奨されます。

まとめ

本記事では、電子契約における原本の定義から、電子印鑑の法的効力、タイムスタンプの必要性、そして紙の保管が必要になるケースまで、幅広く解説しました。以下に重要なポイントをまとめます。

電子契約の原本管理のポイント

1. 原本性の確保:電子契約の原本性を確保するためには、本人性(電子署名)、非改ざん性(タイムスタンプ)、存在証明(適切な保存システム)の3要素が重要です。

2. 適切な保存方法:クラウドサービスや自社サーバーでの保存において、セキュリティ対策、バックアップ体制、災害対策を徹底することが重要です。

3. 法的要件の遵守:電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存することで、税務調査や訴訟時にも有効な証拠として認められます。

4. 例外的なケースへの対応:公正証書が必要な契約など、一部の契約については紙の原本も必要になるケースがあることを理解しておくことが重要です。

電子印鑑の法的効力を確保するための注意点

1. 適切な電子署名の選択:契約の重要性に応じて、当事者型電子署名と立会人型電子署名を適切に選択することが重要です。

2. 本人確認の徹底:電子印鑑の法的効力を高めるためには、厳格な本人確認プロセスを経ることが重要です。

3. 秘密鍵の適切な管理:電子署名の秘密鍵を適切に管理し、第三者による不正使用を防止することが重要です。

4. タイムスタンプの付与:電子署名に加えてタイムスタンプを付与することで、署名時点の証明と非改ざん性の確保が可能になります。

今後の電子契約の展望と課題

1. 技術の進化:ブロックチェーン技術やAIを活用した電子契約システムの発展が期待されています。

2. 法制度の整備:電子契約に関する法制度のさらなる整備により、より多くの契約が電子化されることが予想されます。

3. 国際的な標準化:国際取引における電子契約の標準化が進み、国境を越えた電子契約がより一般的になることが期待されます。

4. セキュリティ対策の強化:サイバー攻撃の高度化に対応するため、電子契約システムのセキュリティ対策のさらなる強化が求められています。

電子契約は、業務効率化やコスト削減、環境負荷の低減など、多くのメリットをもたらします。適切な知識と対策を持って導入することで、これらのメリットを最大限に活かすことができるでしょう。

 

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