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電子契約の原本とは?紙の保管が必要になる場合やタイムスタンプの必要性を解説

電子契約の原本とは?紙の保管が必要になる場合やタイムスタンプの必要性を解説

公開日:2023年3月14日 更新日:2023年10月16日

契約をする際、従来は紙の書面でやりとりをしていましたが、昨今では契約書を電子化するケースが増えています。しかし原本についての考え方など、電子契約ならではの悩みや疑問を抱えている方も多いかもしれません。

今回は、電子契約における原本とは何か、どのように保管すればいいのかなどを解説します。電子契約の原本が必要になるケースやデータの保存要件なども解説するので、電子契約の導入を検討している場合はぜひ参考にしてください。

書面による契約と電子契約の違い

電子契約は、文字通り電子文書による契約を指します。書面による契約とは、さまざまな違いがあるため、両者の基礎知識を整理しておくことが重要です。ここでは、書面による契約と電子契約の違いを解説します。

電子契約とは

電子契約とは、契約内容が記載された電子文書に電子署名をし、締結される契約です。書面による契約との大きな違いは、署名や押印などのプロセスです。
書面による契約の場合は、署名や押印をすれば、本人の意思による契約と推定されます。一方電子契約の場合は、電子署名が署名・押印の代わりになるため、押印が必要ありません。電子署名が記されていることで法的効力が保証されるため、書面でのやりとりと同じように契約が可能です。
昨今では、書籍や業務書類などさまざまな分野でペーパーレス化が進んでいます。電子契約の場合、書類の郵送や持ち込みをする必要がなく契約データの保管も紙に比べて手間がかかりません。そのため電子契約の導入はこれからも増えていくと予想されます。

紙の契約書と電子契約書の違い

紙の契約書と電子契約書の違いは、書類の形式や証拠の示し方、事務処理の方法などです。契約書の作成方法や契約のしかたは異なりますが、契約書としての要件を満たしていれば、法的には同等の効力があります。
紙の契約書と電子契約の違いは、以下の表のとおりです。

紙の契約書 電子契約
形式 電子データ
押印 印鑑、印影 電子署名
本人性の担保 印鑑証明書 電子証明書
改ざん防止 契印、割印 電子署名、タイムスタンプ
送付方法 郵送、持ち込み インターネット上の送信
保管方法 ファイリングをして保管 データのままサーバーなどに保管
印紙 必要 不要

両者を比較してみると、電子契約の方が利便性に優れており業務効率化も見込めることが分かります。

電子契約をした場合の原本とは

紙の契約書であれば、原本を簡単に判別可能です。一方、電子契約をした場合の原本は、コピーと厳密に区別するのは難しいとされています。ここでは、電子契約における原本や書類区分を詳しく解説します。

電子契約における原本

電子契約における原本とは、電子署名があり、なおかつタイムスタンプによって契約内容が改ざんされていないことを証明できる電子データです。ただし紙での契約とは異なり、1枚の紙ではなくあくまでも電子データとなります。

電子契約の場合、原本の改ざんなどを懸念する声もありますが、電子契約サービスには電子署名やタイムスタンプなどの機能が備わっています。タイムスタンプとは、取引や手続きなどが行われた日時を記録しておくための技術です。

電子署名やタイムスタンプでは、ハッシュ値が使われています。元のデータが同じであれば生成されるハッシュ値も同じであるため、データが改ざんされていないことを簡単に証明可能です。そのためコピーと原本を厳密に区別する必要はないとされています。

電子契約における書類区分

書面の場合、原本以外にも謄本・抄本・正本・副本・写しといった区分があり、記載内容や効力に違いがあります。

電子契約によって生成された電子データは、電子署名とタイムスタンプにより改ざんされていないことが証明できます。そのため、謄本・抄本・正本・副本・写しを区別する必要はありません。

先述のように、最初に作成された電子データをダウンロードしてコピーした場合でも、電子署名やタイムスタンプのハッシュ値は変わりません。そのため、たとえコピーであったとしても原本と同様に扱えます。

最初に作成されたものを原本と呼ぶこともありますが、電子契約の場合、明確な書類区分はないと考えても問題ありません。

電子契約のデータは紙での保管が必要?

電子契約では、データを原本として扱うため、紙として印刷して保管する必要はありません。ただし紙で保管しなければならないケースもあるため注意が必要です。ここでは、電子契約における契約書の保管について解説します。

電子データの印刷は原則不要

書面による契約の場合、契約書をファイリングし、オフィスなどに保存しておく必要があります。しかし電子契約では電子データを原本として扱うため、紙に印刷して保管する必要はありません。データとして企業のサーバーやクラウドサービスなどを利用して保管しておきましょう。

契約書のようにファイリングする必要はなく、保管場所も不要になります。物理的なスペースが不要になるだけでなく、印刷代や郵送代などコストの削減にもつながります。

契約書を紙で保管するケース

電子契約では、契約書を紙で保管しなければならないケースもあります。ここでは、税法上の規定を満たさない場合、紙の契約書を電子化する場合の2つに分けて、電子データではなく紙で保管するケースを解説します。

税法上の規定を満たさない場合

税法上の規定を満たさない場合は紙での保管が必要です。税法上では、電子帳簿保存法により、電子契約の電子データを保管する際の要件が定められています。

保存要件は、大きく分けて真実性の確保と可視性の確保の2つです。真実性の確保は、訂正・削除履歴の確保(帳簿)、相互関連性の確保(帳簿)、関係書類等の備付けの3つが該当します。一方可視性の確保は、見読可能性の確保、検索機能の確保の2つです。

保存要件は電子帳簿保存法施行規則で定められています。これらの要件を満たせない場合は、紙で保管しなければなりません。事前に電子契約書や関連書類を見て、要件を満たしているかどうか、要件を満たせるように進められるかどうかを確認しましょう。

紙の契約書を電子化する場合

紙の契約書を電子化する場合も同様です。書面契約の場合、原本となるのは契約した際の書面のみとなります。そのため、電子化して保管するような場合でも原本は残さなければなりません。

保管スペースを減らすために電子化しても、それが書面による契約であれば、結局紙の保管が必要になります。さらに原本の保管だけでなく印紙の貼り付けも必要です。電子化の作業も相まって、担当者の負担がかなり増えてしまいます。

なるべく紙での保管をなくしたい場合は、書面ではなく最初から電子契約で締結することがおすすめです。要件を満たしていれば、電子データをそのまま原本として保管でき、書面での契約のように印紙を貼り付ける必要もありません。

電子契約の原本が必要になるケースとは

裁判における証拠として提出する際や、税務調査の資料として提出するような場合は、電子契約の原本が必要です。ここでは上記の2つに分けて、電子契約の原本が必要になるケースを詳しく解説します。

裁判における証拠として提出するケース

裁判においては契約書の原本が必要です。例えば民事裁判では、証拠書類として契約書の原本の提出が求められることがあります。

書面による契約であれば原本が明確になっているため、それを証拠として提出すれば問題ありません。しかし電子データで保管している場合、原本・謄本・抄本・正本・副本・写しなどの区分が基本的にないため、原本をどのように提出するのかが問題となります。

電子契約における契約書の原本の提出について、特に法令などで定められているわけではありません。電子契約書を証拠書類として提出する場合は、電子データをプリントアウトし、それを提出することで証拠と認められることが一般的です。

税務調査の資料として提出するケース

税務調査の資料として提出するケースもあります。税務調査とは、納税者が正しく税務申告を行っているかを確認するために税務署などが調査を行うことです。

すべての納税者に対して実施されるわけではなく、ある程度税務署側で選別してから行われます。主に、一般的な任意調査と、不正が疑われる納税者に対して実施する強制調査の2種類です。

税務調査では、契約書や請求書、領収書など帳簿書類の提示・提出が求められます。担当者にチェックしてもらうだけで終わることもあれば、状況によっては税務調査の資料として提出し、書類を預かってもらうケースもあります。

帳簿書類の保管は、電子帳簿保存法の規定に対応していなければなりません。正しい保管方法は次の見出しで詳しく解説します。

電子契約におけるデータの保存要件

電子契約におけるデータの保存要件は、7年間保存すること、タイムスタンプを付与することなどさまざまです。ここでは保存の際に確認しておきたい要件を5つに分けて、それぞれ詳しく解説します。

7年間保存すること

電子契約のデータは7年間の保存が必要です。税法上、契約書などの帳簿書類にも保管義務があります。契約書だけでなく総勘定元帳や仕訳帳、現金出納帳、見積書、注文書、請求書、領収書なども保管しなければなりません。

ただしすべての契約書が7年保存の書類になるわけではありません。例えば青色申告の法人が欠損金繰越控除の適用を受ける場合、その事業年度の契約書は10年間保管することになります(平成30年4月1日前に開始した事業年度であれば9年間)。

保管の起算日は、各事業年度の申告書提出期限の翌日です。欠損金繰越控除の適用を受ける場合の起算日も同様です。電子データを保管する際は、起算日をよく確認しておき、把握漏れがないように注意しましょう。

タイムスタンプを付与すること

電子帳簿保存法の要件として、真実性の確保が求められます。真実性を確保するためにはタイムスタンプの付与が必要です。タイムスタンプが付与されていれば、その日時に文書が存在していた事実や改ざんがされていないことを証明できます。

ただしタイムスタンプは、システム導入時の初期費用や発行ごとの費用が発生します。企業によって提供しているサービス内容もさまざまなので、導入には総合的にそれなりのコストがかかるなどの懸念がありました。

しかし2022年の法改正では、タイムスタンプの付与期間についての要件が緩和されています。さらにタイムスタンプの代わりとして、訂正又は削除を行うことができないクラウド等を利用することもできるようになりました。

画面や書面で契約内容が確認できること

画面や書面で契約内容が確認できることも重要な要件です。電子帳簿保存法では、見読可視性の確保も必要とされています。つまり、電子契約の内容がディスプレイやプリンターで明瞭に分かるようになっていなければなりません。

例えば機器の性能によっては、画質が悪く文字が見えにくくなってしまう場合もあります。基本的には読みにくかったとしても、はっきりと内容が判別できる状態であれば問題ありません。しかし契約内容が判別できない場合は、要件を満たしていないと見なされます。

例えばディスプレイで表示する場合、14インチ以上のものを使う必要があります。さらに文字や数字が手書きで書かれている場合、電子帳簿保存法の対象にはならず、要件を満たさないので注意しましょう。

マニュアルを備え付けること

電子データをシステムで保存する場合は、システムに関するマニュアルを備え付けておく必要があります。企業の役員や従業員など電子データに関わる人が、すぐにシステムにアクセスできるようにするためです。

システムに関するマニュアルは、紙媒体はもちろん、電子ファイルやオンラインで用意しても問題ありません。ただしシステムの概要や操作方法など、誰でも分かるように記載されている必要があります。

その他、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンターなどの取扱説明書の備えつけも必要です。さらに電子データをディスプレイに表示して、データが必要になった際にいつでも閲覧またはコピーできるようにしておかなければなりません。

検索機能を設定すること

電子データを保存する際には、検索機能を設定することが義務付けられています。2022年1月の法改正によって新しく追加された項目です。ただし基準期間内の売上が1,000万円以下の小規模企業は、税務署の求めに応じて電子データの提供をする場合、検索機能を設定する必要はありません。

検索機能として定められているのは、取引年月日、取引金額、取引先です。これらがスムーズに検索できるようになっていれば、最優先の要件を満たしていることになります。

上記の他にも、日付や取引金額の範囲での検索や、2つ以上の記録項目を組み合わせて検索できることも要件です。ただし税務職員の求めに応じて、電子データのダウンロードができるようにしている場合これらの対応は不要です。

まとめ

電子契約の原本は、電子署名やタイムスタンプにより改ざんできない電子データのことです。紙とは異なり書類区分が存在しないため、電子データをダウンロードしたりコピーしたりした場合でも原本と同様に扱われます。

電子契約は、税法上の要件を満たせば電子データのまま保管できます。真実性の確保と可視性の確保を中心に、要件を満たしているかどうかを事前に確認しておきましょう。

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@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)

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