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預り証とは?決算での取扱いや注意点を解説

預り証とは?決算での取扱いや注意点を解説

公開日:2023年4月24日 更新日:2023年10月16日

ビジネスにおいて物品や金銭を預かった場合に、預り証を発行するケースがあります。預り証を受け取った時点や決算の時点で仕訳をする必要があるため、経理担当者は適切な扱いを心得ておかなければなりません。

そこで今回の記事では、預り証とは何か、決算における取扱い方法や注意点などについて詳しく解説します。預り証の発行方法や書き方・文例についても解説するので、預り証の発行が必要になったときの参考にしてください。

預り証とは何か

預り証とは、他人の物や金銭を預かった場合に発行する書類のことです。物や金銭を一時的に預けたこと、または預かったことを証明するために発行します。

単に物や金銭を預けただけでは、法的には保有権は移転していません。そこで一時的に専有・保管しているにすぎないことを示すために預り証を発行します。物や金銭を預けた側は、預り証があることで相手に対して所有権を主張することが可能です。

法的には非常に重要な書類なため、預り証の効果や内容を正しく理解しましょう。誤った理解をしていたことが原因で想定外のトラブルに巻き込まれるおそれもあります。預り証を受け取ったときは、大切に保管しておくことが重要です。

預り証と領収証の違いとは

預り証と同じように、他人に対して発行する書類の一つに領収書があります。領収書とは、商品やサービスの提供に対する支払いの種々を証明する書類です。例えば以下の書類も領収書として扱われることがあります。

・支払い先や金額が記載されたレシート
・銀行振り込みの場合の振り込み明細書
・クレジットカード払いの場合の利用明細書

預り証と領収書はまったく性質が異なるものなので、混同しないように注意が必要です。預り証は、預けた物や金銭の所有権がまだ移転していない状態を前提としています。一方、領収書は物やサービスを提供し、領収した側に所有権が移転した状態を前提として発行する書類です。ただし実務上は預り証を領収書代わりに使うこともあります。

預り証の目的・種類

預り証は日々の取引において、さまざまな目的のために発行されます。ここでは一般的に預り証の発行が想定される4つのケースを紹介します。

代金の預け入れ

売上代金の一部を手付金として預けたことを証明するために、預り証が発行されるケースがあります。

手付金とは、売買契約を締結する際に買い主から売り主に代金の一部として支払うお金のことです。不動産売買の契約の際に設定されることが多く、正式に売買が成立した場合に返還されます。ただし実務上は手付金を代金の一部に充て、正式に売買が成立した際に残額を支払うケースが多いようです。

なお手付金の額は、一部の例外を除き法的な制限はありません。しかし多すぎても少なすぎても取引に支障が出るため、合理的な金額を決める必要があります。不動産売買の契約の際は、手付金を売買代金の5%~20%の範囲内で決めることが一般的です。

担保の預け入れ

担保として物や金銭を預け入れた場合にも、預り証が発行されます。担保とは債務の支払いが困難になった場合に備えて、物や金銭などを債権者へ差し入れることです。

分かりやすい例が、アパートやマンションを借りる際の敷金です。敷金は礼金や家賃とは異なり、担保として預けているにすぎません。家賃を毎月支払い、原状回復義務を果たしたら、退去をしたあとに戻ってきます。一方、家賃の滞納があったり、部屋に通常損耗や経年劣化によるものではないダメージがあったりした場合は、敷金が減額されることもあり得ると考えましょう。

なお敷金について預り証を発行する法的義務はありませんが、実務上はトラブル回避のために発行されるケースが多くなっています。

預託目的の預け入れ

有価証券や金銭などを運用する目的で金融機関に預けた場合にも、預り証は発行されます。担当者に窓口などで直接有価証券や金銭などを預けたケースを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。

この場合、銀行法など法律の規定に基づき預り証を作成する義務が生じます。ただし、その場で通帳などに記録する場合は預り証を発行しないこともあります。別に記録があり、有価証券や金銭を預けたという事実が立証できるためです。

運搬や保管目的の預け入れ

運搬業者が運搬の対象となる資産を一時的に預かる際に預り証が発行されるケースがあります。ただし実務上は領収書が預り証としての機能も兼ねていることが多いようです。

例えば宅配便などの運搬サービスを利用する際、荷物を預けると運搬費用にかかる領収書が発行されます。その際に受け取った領収書を提示すれば、荷物を預けたことを証明できます。

また貸倉庫を利用する際に保管するものに対して預り証を発行するケースもあります。保管しているものを取り出したい場合は預り証を提示し、手続きを進める流れです。

預り証の書き方・文例

預り証の書き方や文例には、法律上の定めはありません。しかしトラブル防止のためには、必要な情報を網羅した預り証を作成するのが望ましいでしょう。ここでは預り証の書き方や文例について紹介します。

預り証に記載する項目

一般的に、預り証には主に以下の項目を記載します。

・預けた人の氏名、住所
・預かった人の氏名、住所
・預かったものの物品名、数量、金額
・預かった日の日付
・預かったものを返却する場合の条件
・預かり期限

預かったものが多い場合は、別紙で目録を作成する方法もあります。また有償で預かった場合は費用や支払時期についても明記しておきましょう。

預り証の文例

預り証の文面は、現金を預かったのか、物品を預かったのかによっても異なります。まず現金を預かった場合の文面は以下のとおりです。

現金お預かり証

住所:□□県□□市□□町□ー□
氏名:鈴木 花子様

金 200,000円 也

但し、手付金として、
上記の金額を正にお預かりいたしました。

令和5年4月1日

住所:○○県○○市○○町○ー○
氏名:○○○株式会社

一方、物品を預かった場合の文面は以下のとおりです。

物品お預り証

住所:□□県□□市□□町□ー□
氏名:山田 太郎様

お預かりもの 数量 備考

以上

上記のものを正にお預かりいたしました。

令和5年4月1日
住所:○○県○○市○○町○ー○
氏名:○○○株式会社

預り証を授受したあとの処理

預り証を授受したあとの処理について解説します。

まず預り証を受け取った後に売買が成立した場合は、預り証と引き換えに領収書が発行されます。また担保や預託、運搬、保管などの目的で物品や金銭を預けた場合は、返却の際に預り証と交換することが基本的な流れです。預り証を紛失した場合は先方に相談し、対応を仰ぎましょう。

なお担保として預けた場合、返済が遅れたなどの理由で担保条件が成就したら預けた物や金銭は返却されないので、預り証を破棄することになります。賃貸契約を結んだ際に預けた敷金に関しては、原状回復費用を差し引いた金額が返還されるため、残金がなければ預り証の効力もなくなる点にも注意が必要です。

預り証の決算での取り扱い

決算における預り証の扱いにはいくつかパターンがあります。

まず売上代金の一部として預り証を発行した場合は、決算の時点で商品の引き渡しが完了していなければ売上として計上しません。なお目的がサービスの提供である場合は、サービスを提供する予定が確定しているなら売上として計上します。

また預り金はいつ返還するかによっても貸借対照表上の分類が異なるため注意が必要です。1年以内に返還する予定があるなら、「預り金」として流動負債に含めます。一方、1年以内に返還する予定がないなら、「長期預り金」や「預り保証金」などの勘定科目を使い、固定負債に含める流れです。

預り証を受け取った場合の仕訳例

物品や金銭を預け、預り証のやり取りをすることも取引にあたる以上、会計上の処理として仕訳が必要です。ここでは賃貸契約の敷金を差入れ、預り証を受領した場合を想定した仕訳例を紹介します。

預り証を受領したとき

まず預り証を受領した際の仕訳について解説します。賃貸契約を締結し、敷金100万円を支払ったときの仕訳は以下のとおりです。なお敷金の償却額は決まっていないことを前提とします。

借方 貸方
差入保証金 100万円 現金 100万円

今回のケースのように、償却額(退去にあたって差し引かれる金額)が決まっていない場合は、原状回復にかかる費用が分かりません。そのため一度全額を資産とする会計処理を行います。

償却が決まっている場合

償却額が決まっている場合の仕訳についても紹介します。契約期間3年として賃貸契約を締結し、敷金100万円(うち償却額40万円)を差入れした場合の仕訳は以下のとおりです。

借方 貸方
差入保証金 60万円
長期前払費用 40万円
現金 100万円

さらに期末時点には、契約時に定めた契約年数で均等割した額を支払手数料として償却する仕訳が必要になります。

借方 貸方
支払手数料 13万3,333円 長期前払費用 13万3,333円

敷金が返還されたとき

敷金が返還された場合も仕訳が必要です。ここでは敷金100万円、うち80万円が原状回復費用に充てられ、差額が返還された場合を想定します。

借方 貸方
現金 20万円
修繕費 80万円
差入保証金 100万円

原状回復費用に充てられた分を修繕費とし、残額を現金の授受があったものとして仕訳すると考えます。なお仕訳を忘れてしまうと帳簿上と実際の現金残高とが一致しない原因になるため注意してください。

預り証を発行する際の注意点

預り証を発行する際、扱いを間違えてしまうとトラブルの原因になりかねません。ここでは特に注意すべき点として、印紙が必要なケース、管理方法、署名押印の必要性、紛失した場合の扱いについて解説します。

印紙が必要なケースがある

物品を預かった場合の預り証については印紙の貼付は不要です。

ただし金銭や有価証券を預かった場合は、印紙の貼付が必要になるケースがあるため注意してください。売上代金として預かった場合は、5万円以上から金額に応じた印紙税が発生します。

売上代金以外の場合でも、5万円以上で200円の印紙税が発生します。金額が明確にわからない場合でも、200円の印紙を貼らなければならないケースもあるため事前に確認しましょう。

なお印紙の貼付にあたっては印鑑またはサインで割印をする必要があります。割印をしていないと税務調査で指摘された場合に、過怠税として印紙税額の3倍を納付する必要が出てくるため注意してください。

管理方法を明確にする

物品を有償で預かる場合、預かった側に善管注意義務が生じます。善管注意義務とは「善良な管理者の注意義務」の略です。有償で預かる以上、十分な注意を払い、紛失したり傷をつけたりすることがないよう保管する義務が生じると考えましょう。

そのため預かる物品の管理の仕方や、トラブルが起きた場合の対処法についても決めておかなければなりません。一度決めたことは社内で共有した上で、状況に応じて適宜見直しましょう。

なお無料で預かる場合、善管注意義務は生じません。自己の財産に対するのと同一の注意をもって寄託物を保管すれば足りますが、トラブル防止のためにも管理方法には気を配る必要があります。

署名押印をする

預り証には、預かった側の署名と押印が必要になります。署名と押印があることで、預り証の内容が真正に成立したものと推定されるためです。署名と押印がなくても法律違反にはなりませんが、トラブル回避のためにはあった方が望ましいでしょう。

さらに高価なものを預かった場合は、実印の押印および印鑑証明書の提出といったより厳密な手続きが必要です。預り証の効力をより強力なものにするために有効な手段です。

相手が預り証を紛失した場合

相手から預り証を紛失したと申し出があった場合の扱いについて説明します。

預り証を紛失した場合でも、お互いに物品や金銭、預り証を取り交わした事実が確認できれば問題ありません。そもそも預り証は双方の合意により発行されるものであり、複写した預り証が手元に残っているはずです。預り証の写しを確認すれば、いつ、何を、誰から預かったのかはすぐに分かります。

調べた上で特に問題がなければ、預かったものを返却して構わないでしょう。ただし預かったものを返却したあとに紛失した預り証が見つかり、二重に返還を求められる可能性は否定できません。トラブルを回避するためには、預り証を紛失したことを証明する書類を発行することが望ましいでしょう。

まとめ

預り証とは物品や金銭を預かった側が発行する書類のことです。預り証があることで、物品や金銭を預けている事実を証明できます。

また預り証を発行した場合、状況によって経理処理や決算方法が異なります。商品の引き渡しが完了したか、サービスの提供が確定しているかなど、状況に応じた適切な方法で進めましょう。

経理業務では預り証の作成や仕訳などを含め、さまざまな業務が発生するため、効率的に業務を進めなければなりません。コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』を導入すれば、帳票書類を電子化しWeb上での送付が可能になります。送付先の要望に合わせて、郵送やFAXでの送付も可能です。また、送付した帳票書類は電子帳簿保存法に対応した方法で保存できます。帳票書類の送付や管理を簡単に行えるため、ぜひ導入をご検討ください。

@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)

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