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税務調査の流れは?指摘を受けやすい法人の特徴や注意点の解説

税務調査の流れは?指摘を受けやすい法人の特徴や注意点の解説

公開日:2023年10月16日 更新日:2023年11月15日

税務調査とは、申告された税額に対し、税務署などが不正・誤りがないかを調査することです。税務調査を受ける際は事前に準備をしておき、当日は適切に対応できるようにしておくことが重要です。連絡を受けたときに慌てないよう、流れを把握しておきましょう。

本記事では、税務調査の流れや指摘を受けやすい法人の特徴、税務調査に関する注意点などについて詳しく解説します。

税務調査とは

税務調査とは、法人または個人が行う申告について、内容が正しいかどうかを徴税機関(国税庁、税務署、国税事務所、税関など)が調査することをいいます。国税通則法や法人税法により調査官には権限が与えられているため、税額の算出根拠について質問したり、帳簿・領収書などの資料を検査したりすることが可能です。

申告書や帳簿などを確認した結果、誤りがあれば修正申告や追徴課税を行う必要が出てきます。故意に不正が行われていた場合は罰則を受けることもあるので注意しなければなりません。

なお、詳しくは後述しますが、脱税が疑われるわけでなくても、税務調査は行われます。会社を経営している限りは、いつかは税務調査を受けることもあると考えましょう。

税務調査には任意調査と強制調査がある

一口に税務調査といっても税務調査には任意調査と強制調査の2つの種類があり、それぞれ意味合いが異なります。ただし税務調査を受ける場合、ほとんどが任意調査です。ここでは両者の違いについて詳しく解説します。

任意調査とは

任意調査とは、納税者(個人や企業)が正しく申告を行っているかを確認するために行う税務調査のことです。一般的に行われている税務調査は、ほとんどが任意調査となります。

任意と名前に入っていますが、実際は税務署から任意調査を行う旨が知らされたら、必ず協力しなければなりません。調査官からの質問に虚偽の回答をしたり、黙秘したりすることも厳禁です。

事前に徴税機関から連絡が入り、調査の日程や必要書類が案内されます。連絡から調査までにはだいたい2~3週間程度の余裕があることが多いので、その間に準備をしましょう。

強制調査とは

強制調査とは、国税庁調査査察部により行われる調査のことです。国税庁調査査察部は「マルサ」とも呼ばれています。ニュースやドラマなどで取り上げられることもあるため、名前だけは聞いたことがある方も多いかもしれません。強制調査の目的は、脱税などの不正の証拠を押さえることです。そのため、1億円を超える不正が疑われる場合など、特に悪質で大口の脱税疑惑のある企業に対して行なわれます。

なお、裁判所から発行される令状を元に実施されるため、対象者は調査を拒否できません。調査官による資料の押収や聞き取りが行われ、脱税行為が確認されれば検察庁に告発されます。

税務調査の実施時期と調査期間

前述のとおり、一般的に行われている税務調査はほとんどが任意調査です。ここからは、任意調査の連絡を受けた場合を想定し、税務調査の実施時期と調査期間について解説します。連絡を受けても他の業務を進めつつ準備ができるよう、大まかなスケジュール感を把握しておきましょう。

実施時期の目安は?

税務調査の実施時期は明確に決められているわけではありません。一般的には4~5月頃と7~12月頃に実施されることが多い傾向があります。法人の場合は3月決算が多いため、申告書類の調査が7月頃から本格的に行われ、実地調査が行われるのは9~12月頃が多くなっているようです。

一方、1~3月は確定申告の対応に追われるため、税務調査はあまり行われないことが実情です。ただし、これらはあくまでも目安であるため、1月~3月、6月に行われることもありえます。連絡を受けたら必ず応じられるようにしておくことが重要です。

調査期間は2~3日程度が多い

税務調査の期間は、企業の売上規模によっても変わってきます。通常2~3日程度に渡り調査が実施されることが多いようです。調査内容が複雑な場合や追加資料の提出が必要な場合は長期化する可能性もあります。

なお、税務調査の通知から税務調査の実施、調査終了の決済、調査の完了までの全体的なスケジュールは以下のとおりです。

調査内容 日数
1.税務調査の通知を行う 10日
2.税務調査を実施する 2〜3日
3.申告内容の問題点の抽出とその検討を行う 7〜12日
4.誤り事項等の調査内容を調査対象へ説明する 3〜7日
5.税務署内で調査終了の決裁を受ける 7〜10日
6.調査先企業等に必要な通知を行う 7〜10日

税務調査(任意調査)の一般的な流れ

会社が存続する限りは、いつかは税務調査を受けることはあり得ます。いざというときに慌てないよう、一般的な流れについて知っておきましょう。具体的な流れについて解説します。

1.事前通知を受ける

既に触れたとおり、任意調査は抜き打ちで行われることはほとんどありません。税務署から電話や文書で税務調査を実施する旨の通知が、調査を行う2~3週間前に届きます。

なお、税務申告の際に税理士が税務代理権限証書を添付していた場合は、税理士あてに連絡が来ます。連絡があった旨を知らされたら、準備を始めましょう。

2.日程調整をする

任意調査の日程を調整してもらうことはできるので、当初提示された日程での対応が難しい場合は、その旨を伝え必要な調整をしましょう。税理士の立会いが必要なら、税理士のスケジュールを踏まえた日程調整もしなければなりません。

なお、実際の調査には2~3日かかるので、十分な時間を確保することを意識したスケジュール調整が必要です。

3.書類を準備する

税務調査の実施日までに必要な書類を準備しましょう。必要書類は、主に該当年度の確定申告書や貸借対照表、損益計算書などの国税関係の書類です。税務申告の際に提出する書類以外に、請求書や領収書など社内で保管している書類も対象となります。

書類を準備したら、不備がないか確認しましょう。また、税理士と相談し当日想定される質問の回答も用意しておくことをおすすめします。

4.実地調査を受ける

当日は調査官が会社や自宅、店舗などを訪れ、税務調査が実施されます。聞き取り調査や書類の提示などを求められるため、指示に従いましょう。

また訪問が終わった後に追加で資料の提出が求められることもあります。多くの場合、2~3日をかけて実地調査は行われますが、状況次第ではこれ以上日数がかかることもあるため注意が必要です。

5.調査結果の通知を受ける

税務署から調査結果の通知が来ます。調査結果の通知は大きく分けると以下の3通りです。

名称 概要
申告是認 調査完了となる(追加対応の必要なし)
修正申告 修正申告の手続きをした上で不足している税金を納める
更正 納税者が修正申告を故意に出さない場合に行う課税処分。税務署側から不足している税金を納めるよう求められる

なお、修正申告および更正の通知を受けた場合、不服がある場合は不服申立てができます。

税務調査に必要な書類(法人税の場合)

税務調査では帳簿や申告書などを確認する作業が行われます。税務署の指示に従って3年分から5年分の書類を用意することが一般的です。法人税の場合、主な必要書類は以下のようになっています。

・法人税申告書
・消費税申告書
・決算書
・決算内訳書
・総勘定元帳
・事業概況書
・その他、証票書類(請求書や領収書など)

これらの書類に抜け・漏れなどの不備がないかを確認し、あった場合は税理士と対応を協議しましょう。

税務調査の対象になりやすい法人とは

税務調査は申告・納税が適切に行われているかを調べるための手続きです。そのため、指摘事項が発生する可能性が高い法人に対して実施される傾向があります。

ここでは、税務調査の対象になりやすい法人の特徴をいくつか解説します。

過去に指摘を受けたことがある

過去の税務調査で修正申告や更正の処分を受けたことがある法人は税務調査が入りやすくなっています。過去に指摘したところが正しく処理されているか確認するためです。指摘された箇所は修正し、適切な処理を続ける必要があるため、問題がないかを事前に確認してください。

特に意図的な脱税を図ろうとして税務署から指摘を受けていた場合は、疑いの目が向けられるので、税務調査を受ける可能性も高くなると考えましょう。

売上や利益が大きく変動した

例年よりも売上や経費が大幅に増えた場合、または減った場合は税務調査の対象となりやすい傾向があります。不正な会計操作の可能性を疑われるためです。

また同業他社と比較して利益が極端に低い場合も不正を疑われやすくなっています。もちろん、不正を行っていなければ問題はありません。売上や経費が大幅に増えたり、利益が極端に低かったりした場合は、なぜそうなったのかを証拠とともに説明できるようにしておきましょう。

開業後数年以上が経過している

開業してから数年以上が経過している法人は税務調査の対象になりやすいでしょう。過去数年分の申告内容を調べたり、同業他社と比べ記帳方法などに不審な点がないかを調べたりなど、多角的にチェックできることが理由として挙げられます。

実務上は、申告内容に疑わしい点があってもすぐに調査せず、あえて数年経ってから調査が行われることも珍しくありません。税務調査では3期分、状況次第ではそれ以上さかのぼって調査できるからです。

税務調査で指摘を受けやすい法人の特徴

税務調査が行われても、指摘を受けるとは限りません。しかし、指摘を受けやすい法人にはある程度の特徴があることも事実です。ここでは、税務調査で指摘を受けやすい法人の特徴について、詳しく解説します。

売上の計上漏れや翌期計上がある

売上の計上漏れや翌期計上があった場合、税務調査で指摘を受ける可能性が高くなります。これら2点は、調査官が最も注意深く調査しているからです。

特に、過年度よりも売上や利益の増減が大きい場合は、申告漏れの有無をチェックされます。期末に発生した売上を翌期の売上としている場合も指摘されやすいです。本来は、期末であったとしても当期の売上として反映させなければなりません。

また、軽微な売上を経営者がポケットマネーにしていたことが原因で、売上の計上漏れが起きることもあります。関係各所にヒアリングを行って通帳や帳簿に表れていない売上がないかを把握し、申告書に適切に反映させましょう。

経費の二重計上がある

経費の二重計上がある場合も、税務調査で指摘を受ける可能性が高くなります。特に、経費をクレジットカードで支払っている場合は注意が必要です。

クレジットカードで支払った経費を領収書とクレジットカードの明細書の両方から計上していた場合、二重計上になってしまい、税務調査で指摘される可能性が出てきます。交際費や外注費を水増し計上しているケースも多いため、交際費や外注費は税務調査でチェックされやすいことも実情です。

社内で交際費・外注費が多く発生している場合は、二重計上にならないよう特に注意して扱いましょう。普段から領収書管理を厳密に行うとともに、二重計上が発覚したら修正しておくことが重要です。

在庫の計上漏れがある

在庫の計上漏れも、税務調査において指摘されやすい項目の一つです。期末棚卸しで在庫の計上漏れがあると、売上原価が増えるため利益が少なくなります。棚卸資産は金額が大きく、納税額にも影響するため、調査官も税務調査において着目しています。

仕掛品や貯蔵品、社外にある在庫は見逃しやすいため注意が必要です。社外にある在庫とは、未着品(注文したけど手元には届いていないもの)やトラック在庫(発送したけど相手方にまだ届いていないもの)があげられます。

実務では棚卸表を作成し、これに基づき決算処理を行いますが、数量や価格が違っていたら正しく計算が行えません。ミスがないかも改めてチェックしておきましょう。

税務調査を受ける際の注意点

税務調査を受けるといっても、不正をしていなければ萎縮する必要はありません。調査官の質問に対し適切に回答すれば問題ありませんが、調査官との行き違いなどトラブルが生じないよう、以下の点には注意しましょう。

質問には正確に答える

調査官からの質問には正確に答えましょう。税務調査の質問に虚偽の回答をすると罰則を受けかねません。質問に対しあいまいに対応したり、無理して答えようとちぐはぐな回答をしたりしてしまうと、かえって不信感を持たれます。

また、明確に回答できない場合は、後日調査して回答することも可能です。「お調べして後日お戻しします」と伝え、後日調査結果を踏まえて正確な回答をしましょう。

不安な場合は税理士に立会いを依頼する

顧問税理士がいる場合は、税務調査の連絡を受けたら事前に打ち合わせをしておきましょう。前述したとおり、調査官はさまざまな質問をするため、どのように回答するのかを擦り合わせておくことが重要です。

なお、税務調査当日は税理士の立会いがなくても問題ありませんが、不安な場合は顧問税理士などに立会いを依頼しましょう。顧問税理士のスケジュールを確保した上で日程の希望を伝えてください。

誤りを指摘されたときの対応を検討する

税務調査で誤りを指摘された場合は、修正申告の手続きが必要になります。

不足している税額の差額分に加え、追徴課税分を納付しなければなりません。一方、税金を納めすぎていた場合は、更正の請求を行い、内容が認められれば税金が還付されます。

また税務調査の指摘に納得がいかない場合は、更正の請求に対して不服申立て、再調査請求の手続きをしましょう。顧問税理士がいる場合は協議し、連携して対応を行うことをおすすめします。

まとめ

税務調査は通知を受けてから終了するまで1カ月以上かかることが多いです。税務調査で誤りを指摘された場合は、修正申告などの対処が必要になります。修正申告の手続きには手間がかかるので、税務調査で指摘を受けないように普段から正確に会計処理を行うことが大切です。

また日々の経理業務において、効率化や正確性を追求することも、結果として税務調査で指摘を受けないために役立ちます。

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