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法人に対して税務調査が入る確率は?税務署が調査に入る条件とは

法人に対して税務調査が入る確率は?税務署が調査に入る条件とは

公開日:2023年11月15日 更新日:2024年4月17日

経営者や経理担当者であれば、税務調査の対象になる確率がどのくらいなのか気になる方も多いでしょう。税務調査の対象となる法人は無作為に選ばれるものの、税務調査の対象となりやすい法人の条件があります。

今回は、法人に対して税務調査が入る確率や税務署が調査に入る条件を解説します。税務調査の種類や流れ、チェックされやすい項目なども解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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法人に対して税務調査が入る確率

国税庁が公表している資料によると、2021年(令和3年度)の法人税の申告件数は約307万件、税務調査の件数は約4万1,000件です。そのため、単純計算で法人に対して税務調査が入る確率は約1.3%と考えられます。

ただし税務調査は、完全にランダムで実施するのではなく、企業規模の大きい法人や不正が疑われる法人を中心として行われることが基本です。そのため、条件によっては税務調査の対象になりやすい場合があります。

ちなみに税務調査を受けた法人や個人事業主は、申告書の間違いが指摘され、修正申告書の提出を求められることがあります。申告書の提出が必要になる確率は、おおよそ80%程度です。

※参考:国税庁 .「令和3事務年度 法人税等の調査事績の概要」

税務調査の種類とそれぞれの調査方法

法人または個人に対して行われる税務調査には、いくつかの種類があります。主な種類は、以下の5つです。

・強制調査
・任意調査
・準備調査
・実地調査
・無予告調査

調査の強制力や事前告知の有無など、調査方法ごとの特徴を整理しておくと良いでしょう。ここでは、それぞれの概要を解説します。

強制調査

強制調査とは国税局査察部が行っており、特に悪質な脱税に対して行われる方法です。裁判所の令状を元に強制的に実施されることが特徴で、所有物の捜索や差し押さえ、証拠物の押収などができます。

強制調査により脱税行為が見つかった場合は検察庁に告発され、刑事事件として処理されることになります。あくまでも悪質な法人・個人に対して行われる、一種の犯罪調査と捉えて良いでしょう。強制調査は映画やドラマなどでよく見られる調査方法ですが、一般的に税務調査と言えば、後述の任意調査を指します。

任意調査

任意調査は一般的に実施されている税務調査で、強制力はなく納税者の任意で行われます。ただし、任意調査の場合であっても拒否はできず、法人もしくは個人は税務調査に対応する義務があります。

任意調査の主な目的は、納税者の税務に関する不審点や不明点を解消し、正確な税額の申告・納税を促進することです。任意調査は、大まかには準備調査と実地調査の2つに分けられます。以下、準備調査と実地調査を詳しく解説します。

準備調査

準備調査とは、正式な税務調査に先立って税務署が行う事前の調査です。正式な税務調査を効果的に進めるための下準備として、納税者の経営状況や帳簿の内容、税務申告の状況などを大まかに把握します。後の項目でも紹介しますが、実地調査が必要かどうかの判断が準備調査の主な目的です。

具体的には、税務調査の対象となる法人が決まった後、主に税務署内で資料や情報網を元に事前調査を実施します。主に以下のような調査が行われます。

・申告書や財務諸表の分析
・取引先や来客数の状況確認
・国外送金等調書のチェック
・書面による問い合わせ
・納税者の呼び出し調査など

準備調査の結果、実地調査が必要だと判断されれば、次のフェーズに移行します。

実地調査

準備調査の調査結果を踏まえて、実地調査を行うかどうかが決定されます。実地調査では、調査官が法人・個人のオフィスや店舗などを訪問して、帳簿書類や領収書などを調査します。調査内容は主に以下の5つです。

・一般調査
・現況調査
・特別調査
・反面調査
・特殊調査

一般調査は、主に納税者全体の経営状況や帳簿・書類の内容を確認するための調査です。通常の税務調査の一環として行われ、税務申告の正確性や適切性を確認します。一般調査では不十分と判断された場合は、特別調査が実施されます。

現況調査は、いわゆる抜き打ち調査で、納税者の事業所や施設の現状を確認するための調査です。物的設備や在庫、従業員の数など、実際の経営状況を把握することを目的としています。

反面調査は、納税者の取引相手や関連会社、付き合いのある銀行など、納税者以外の第三者を対象とした調査です。特殊調査は、通常の調査手法では確認が難しい、特定の問題や疑義に関する調査になります。

無予告調査

無予告調査は、予告なしで実施する税務調査になります。税務調査を実施する場合は、税務署から法人または個人に対して、事前に通知されることが一般的です。ただし、国税通則法では無予告での調査も許されているため、事前連絡のない調査が行われるケースもあります(国税通則法74条の10)。

任意という形になっているため強制力は伴いませんが、正当な理由なく調査を拒否した場合は罰金を科される恐れもあるため注意が必要です。基本的に拒否できないとはいえ、予告なしで税務署の担当者が来ても、すぐに対応できない場合が多いでしょう。

無予告調査は基本的に拒否できませんが、「本日は予定があるので、税理士を交えて後日話し合いたい」など、調査日程の調整は可能です。

税務調査の流れ

税務調査の流れ

税務調査に対応する際は、必要書類の準備、実地調査、調査終了後の3ステップを意識するとスムーズです。ここでは、法人に対する税務調査のおおまかな流れをステップごとに詳しく解説します。

必要書類の準備

税務署から税務調査の通知を受け取ったら、調査の日時や場所、対象期間、調査の内容や目的などを確認します。その後、必要書類を整理して調査の準備を始めましょう。主に以下の書類が必要になります。

・会社概要(会社案内、組織図など)
・仕入関係(見積書、納品書、請求書、領収書)
・経理関係(請求書、領収書)
・帳簿関係(総勘定元帳、売掛帳、買掛帳)
・給与関係
・契約書
・稟議書
・議事録

場合によっては、上記以外にも調査官から追加で資料の提示を求められることもあります。

取りまとめた書類を時系列やテーマごとに整理し、書類に不備や欠落がないか、内容が正確であるかを再確認します。税理士などの専門家と事前に打ち合わせを行い、調査の対応策や書類の細かいチェックなどを行いましょう。

実地調査

実地調査は一般的に2日程度で行われますが、法人の規模や事業内容、調査の目的などによって日数が変わる場合もあります。1日目は、事業の近況に関する聞き取りや会計帳簿の調査が行われることが基本です。調査官から質問が入るので、経理担当者が回答をします。

2日目以降も会計帳簿の調査と質問が行われ、特定の取引や事項に関する詳細な聞き取りが行われることもあります。調査が終了したら税務調査の総括が行われ、税務上の問題点や疑義、修正が必要な点などが指摘されるといった流れです。

実地調査は、税務署と納税者との間での直接的なコミュニケーションの場であり、誠実かつ協力的な対応が求められます。調査の過程での質問や指摘に対しては、適切に説明や補足を行うことで、誤解やトラブルを避けやすくなるでしょう。

調査終了後

税務調査の結果は、数日後~1カ月ほどで送付されることが一般的です。実地調査が終了し税務署から特に指摘事項がない場合、是認通知書が納税者に送付されます。この通知書を受け取ると、税務調査は正式に終了です。

ただし、税務調査を通して申告書の修正が必要になる場合もあります。調査官から税務上の問題点や疑義が指摘された場合、その内容を詳細に確認してください。指摘された内容について、法人側での再確認や検討を行い、修正すべきかどうかを判断します。

修正申告を行うことを決定した場合、税務署へ修正申告書を提出しましょう。修正申告書には、指摘された内容の修正や補足、計算の詳細などが記載されます。追加で納税が必要となった場合、指定された期間内に税金を納付します。

税務署が調査に入る主な条件

税務署が調査に入る主な条件は、主に以下の5つです。

・申告内容に不審な点がある
・過去に不正を指摘された
・昨年と比較して経費が大幅に増えた
・税務調査が入りやすい業種である
・業績が好調なのに赤字になっている

条件に当てはまる法人や個人は十分に注意する必要があります。ここでは、それぞれの条件を詳しく解説します。

申告内容に不審な点がある

税務署が調査に入る主な条件として挙げられることが、申告内容に不審な点があることです。

例えば所得率(営業収入金額のうちの所得額の割合)が著しく下がっている法人は、対象になりやすいとされています。所得率が下がると、利益を圧縮している、つまり税金から逃れようとしているのではないかと疑われる可能性があるためです。

また同業他社の所得率と比較して低い場合も税務調査の対象になりやすいため、注意が必要です。

過去に不正を指摘された

過去に不正を指摘されたという事実は、税務署が調査対象とする法人を選ぶ際の重要な要因です。

法人が過去の税務調査で不正行為や誤りを指摘された場合、税務署はその法人を継続的に管理・監視する必要があります。そのため、税務調査の対象となりやすいとされています。

法人としては過去に不正が指摘された場合、その後の税務申告や経営活動において慎重かつ正確に行動しなければなりません。税務調査の際には、過去の指摘事項に対する是正措置や改善の取り組みを明確に説明し、信頼関係の回復を図ることが求められます。

昨年と比較して経費が大幅に増えた

法人の経費が前年と比較して大幅に増加している場合、税務署はその原因や背景を確認するために税務調査を行う可能性が高まります。

外注費、交際費、広告宣伝費など、特定の経費が多額になっている場合、税務署はその経費の実態や妥当性を疑問視するケースがあります。経費の水増しや不適切な経費計上を疑われるリスクが高まるため注意が必要です。

法人としては、経費が大幅に増加した場合、その背景や理由を明確に把握しておくことが重要です。

税務調査が入りやすい業種である

税務調査が入りやすい業種であることも、税務署が調査に入る主な条件の一つです。経済状況や市場の動向によって、特定の業種が好況となるケースがあります。好況な業種は収益が急増する傾向があり、収益が正確かどうか、税務申告は適切になされているかを確認するため、調査を行う可能性が高まります。

例えば飲食業や風俗業、賃貸業、建設業、美容業などは、調査対象に選ばれる傾向がある業種です。

業績が好調なのに赤字になっている

赤字がずっと続いている法人や、業績が好調なのに赤字になっている法人も、税務調査を受ける確率が高いでしょう。そもそも赤字とは、法人が提出した書類上のことであって、実際に赤字かどうかはわかりません。

黒字を出していても不思議ではないほど業績が好調な法人が、税金から逃れるために赤字を装っているといった悪質なパターンもあります。そのため、毎年赤字になっている企業に対しては、税務署としても神経質にならざるを得ないでしょう。

税務調査で重点的にチェックされる項目

税務調査で重点的にチェックされる項目

税務調査で重点的にチェックされる項目は、以下の5つです。

・売上と仕入れの計上時期
・契約書・領収書
・固定資産
・経費
・寄附金

それぞれの項目を詳しく解説します。

売上と仕入れの計上時期

税務調査では期末の売上と仕入れの計上時期に、期ずれがないかチェックされるケースが多くあります。期ずれとは、当年度に計上すべき売上や経費などの項目を、その前年や翌年に計上してしまうことです。

当年度に計上するべき売上や仕入れが、別の年度に計上されている場合は、修正を求められる可能性があります。特に期末の売上や仕入れ、商品を購入した場合の前払い費用などは期ずれが発生しやすい部分です。

契約書・領収書

税務調査では、契約書や領収書もチェックされます。例えば、契約書に記載されている内容と実際の取引や業務の実態が一致しているかを確認することがあります。また、契約書に記載されている取引価格や報酬が市場価格や業界標準と比較して妥当であるかを確認するケースもあり、チェックポイントはさまざまです。

特に業務委託をした場合は、業務委託契約書や請負契約書などの書類をそろえておく必要があります。また契約書や領収書に必要な印紙が貼られていない場合も指摘されやすいため、注意が必要です。

固定資産

固定資産も税務調査でチェック・指摘を受けやすい項目です。期末の在庫が少ない場合、売上原価が増加し利益が減少するため、税額にも大きな影響が出てきます。在庫の計上漏れは、特に厳しくチェックされるでしょう。

例えば、決算の直前に仕入れた商品を在庫に計上し忘れるケースがあります。このようなミスは税務調査で指摘される可能性が高いため、注意が必要です。

経費

本記事のこれまでの内容からもわかるように、経費の伸び率も税務調査でチェックされやすい項目です。経費の計上は法人の利益を減少させる要因となるため、税務署は税収を確保する観点から、経費の妥当性や正確性に注目します。

例えば売上がそれほど伸びていないのに、経費の伸び率が異常に高ければ、水増しを疑われる恐れがあります。不自然なほど高額な接待費や飲食費なども、細かくチェックを受ける可能性があるため注意が必要です。

寄附金

寄附金も税務調査で重点的にチェックされやすい項目です。寄附金とは、法人や個人が特定の団体や組織、または公共の利益のために無償で提供する金銭です。寄附金には、物品も含まれます。寄附金は税制上の特別な取り扱いがあるため、その計上や適用に関して正確であるかどうかがチェックされます。

寄附金と交際費、拠出金、見舞金との混同も多いため、どの勘定科目で処理するべきか慎重な判断が必要です。社長が個人として負担すべき寄附金は、寄附金として認められないこともあります。

まとめ

本記事でも紹介したように、法人に税務調査が入る確率は約1.3%と考えられますが、企業規模や業種などによって実施される可能性が高くなることもあります。特に申告内容に不審な点がある場合や、過去に不正を指摘された法人は、税務調査の対象になりやすいので注意が必要です。税務調査でミスを指摘されないためにも、経理業務を正しく行ってまいりましょう。

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@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)

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