経理DXとは?業務領域別の全体マップと進め方を6つの観点で解説【2026年最新版】
公開日:2026年6月9日 更新日:2026年6月9日
経理DXとは、経理業務に存在する6つの業務領域(受領/発行/支払/経費/決算/監査対応)をデジタル技術で再設計し、属人化と紙運用を解消する取り組みです。
・単なる「会計ソフト導入」と異なり、業務領域ごとに対象データと運用フローを刷新する
・経済産業省が指摘する「2025年の崖」と電子帳簿保存法の改正により、対応が事実上必須となっている
・IPA「DX動向2024」では取組企業が73.7%まで拡大しており、未着手企業は競争上の遅れが大きくなる
この記事では経理マネージャー・DX推進担当者・経営層の方に向けて、自社のどの業務領域から経理DXに着手すべきかを判断できるよう、6つの業務領域マップと進め方の要点を解説します。
TOPICS
経理DXとは|業務領域別の定義と全体像

経理DXとは、経理部門が担う6つの業務領域(受領/発行/支払/経費/決算/監査対応)をデジタル技術で再設計し、属人化と紙運用を解消する取り組みです。
ここで重要なのは、経理DXが単なる「会計ソフトのクラウド移行」ではない点です。経済産業省が2018年12月に公表した「DX推進ガイドライン」では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています(出典:経済産業省「DX推進ガイドライン」2018年12月)。
経理DXはこの定義に沿って、業務プロセスそのものを変革する取り組みを指します。たとえば「請求書を紙で受け取り、エクセルに転記する」というプロセスを、「請求書を電子データで受け取り、システムが仕訳まで自動生成する」というプロセスに置き換えるのが経理DXの実態です。
「IT化」「電子化」「経理DX」の違い
似た言葉に「経理のIT化」「ペーパーレス化」がありますが、含意が異なります。
| 用語 | 主な対象 | 目的 |
| 経理のIT化 | 会計ソフトの導入 | 入力・計算の効率化 |
| ペーパーレス化 | 紙書類の電子化 | 保管コスト削減 |
| 経理DX | 業務プロセスとデータ流通の再設計 | 業務領域全体の生産性向上と経営の意思決定支援 |
経理DXは「IT化」「ペーパーレス化」を内包しつつ、さらにビジネスプロセスの再設計まで踏み込む取り組みです。
経理DXが注目される3つの背景

経理DXが2024年以降に強く求められるようになった背景は、大きく3つあります。
経済産業省が指摘する「2025年の崖」
経済産業省は2018年のDXレポートで、複雑化・老朽化した既存システムを残したままにすると、2025年以降に最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると指摘しました(出典:経済産業省「DXレポート ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」2018年9月)。
経理部門は基幹システムと密接に連動するため、「2025年の崖」の影響を直接受ける部門です。
電子帳簿保存法の改正による電子取引データ保存義務
電子帳簿保存法は令和3年度税制改正により、令和4年1月1日以後に行う電子取引でやり取りした請求書・領収書・契約書などのデータについて、紙に出力しての保存ではなく電子データのまま保存することを義務付けました。その後、令和4年度税制改正で「宥恕措置」が設けられ、令和5年度税制改正でさらに新たな「猶予措置」が整備されています。猶予措置はあるものの、原則として電子保存が必須である点に変わりはなく、対応は事実上必須です(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」)。
これにより、紙運用を前提とした既存の経理プロセスは、法令対応の観点からも見直しが避けられない状態になっています。
経理人材不足と業務の属人化
IPAが2024年6月に公表した「DX動向2024」によれば、日本でDXに取り組む企業の割合は2024年度調査で73.7%まで増加しています(2021年度は55.8%)。一方で、本格的な成果が出ている企業は約2割にとどまります(出典:IPA「DX動向2024」2024年6月27日)。
経理部門は専門性が高く、特定の担当者にノウハウが集中しやすい部門です。DXによる業務標準化を進めなければ、退職や異動で業務が止まるリスクが高まります。
経理DXの対象領域マップ|6つの業務カテゴリ

経理業務は、対外的なデータの流れで整理すると6つの業務領域に分けられます。これが経理DX計画を立てる際の「全体マップ」となります。
| 業務領域 | 主な業務内容 | 取り扱う主なデータ・帳票 |
| 受領 | 取引先からの請求書・納品書・契約書の受け取り | 受領請求書、納品書、契約書 |
| 発行 | 自社から取引先への請求書・納品書・支払通知書の発行 | 発行請求書、納品書、支払通知書、注文請書 |
| 支払 | 仕入債務の支払処理、振込データの作成 | 支払予定表、FB(ファームバンキング)データ |
| 経費 | 立替経費の精算、出張旅費、交際費の処理 | 経費精算書、領収書、出張報告書 |
| 決算 | 月次・四半期・年次決算、財務諸表の作成 | 試算表、決算報告書、財務諸表 |
| 監査対応 | 内部・外部監査への証憑提示、税務調査対応 | 監査資料、税務調査関連書類 |
この6領域は、それぞれ取り扱うデータ・関係する部署・必要なシステムが異なります。「経理DX=1つの大きなプロジェクト」と捉えるのではなく、領域別に課題と打ち手を整理することが、計画策定の第一歩です。
領域ごとの優先順位の付け方
すべての領域を同時に着手するのは現実的ではありません。一般的には、以下の順序で優先順位を整理します。
・法対応が必要な領域から(電子帳簿保存法・インボイス制度に直結する受領・発行)
・業務量の多い領域から(月数百件以上の請求書を扱う領域)
・属人化が深刻な領域から(特定担当者しかわからないプロセス)
経理DXがもたらす効果と先行指標
経理DXは中長期の取り組みになるため、効果を測る指標を事前に設計することが重要です。
期待される主な効果
| 効果カテゴリ | 具体的な変化 | 評価指標の例 |
| 業務時間の削減 | 手入力・転記・印刷・封入作業の削減 | 月間処理時間(時間/月) |
| コスト削減 | 紙・印刷・郵送・保管コストの削減 | 帳票関連の月次コスト |
| 法対応の確実化 | 電帳法・インボイス制度への自動準拠 | 法対応漏れインシデント数 |
| ガバナンス向上 | 入力ミス・差し戻し率の低下 | 月間差し戻し件数 |
| 属人化の解消 | 担当者交代時の引継ぎ時間 | 引継ぎ所要時間(日数) |
| 意思決定の高速化 | 試算表の早期化、経営報告の頻度向上 | 月次決算所要日数 |
効果測定で押さえるべき先行指標
最終的な効果(コスト削減・時間削減)が現れる前に動く「先行指標」を設定すると、施策の手応えを早く確認できます。
・電子受領率: 全請求書のうち、電子データで受領できた割合
・自動仕訳率: 取引のうち、システムが自動で仕訳を生成できた割合
・差し戻し率: 承認フローで差し戻された件数の比率
・月次決算所要日数: 月末から決算確定までの日数
これらは1〜3ヶ月の短期で動くため、定例ミーティングで追跡する指標として有効です。

業務領域別の取り組みと評価指標

ここからは6つの業務領域について、それぞれの代表的なDX施策と評価指標を見ていきます。
受領業務のDX
請求書を紙やPDFで受け取り、エクセル転記している企業は多くあります。受領業務のDXでは、電子受領プラットフォームやAI-OCRを組み合わせて、データ化と仕訳生成までを自動化します。
・代表的な施策: 電子請求書プラットフォームの導入、AI-OCRによる読み取り
・評価指標: 電子受領率、月間処理時間、差し戻し率
発行業務のDX
請求書・納品書・支払通知書の発行業務は、月末月初に作業が集中しやすい領域です。基幹システムから帳票データを抽出し、電子配信・FAX・郵送代行を自動化することで、月末の業務集中を解消できます。
・代表的な施策: 電子帳票配信サービス、郵送代行
・評価指標: 月間発行件数あたりの処理時間、郵送コスト
なお、コクヨ株式会社が提供する電子帳票配信システム「@Tovas(アットトバス)」は、請求書や納品書をはじめとした帳票を「電子ファイル送信/FAX/郵送」の3つの手段から取引先別に選んで一括配信できるクラウドサービスです。利用件数は60,000件以上(2023年1月時点 送信者アカウント件数)で、製造業・卸売業・商社など多様な業種で導入が進んでいます(出典:@Tovas公式サイト)。
支払業務のDX
仕入債務の支払業務では、振込データ作成と銀行APIによる送金自動化が中心施策です。承認フローを電子化することで、月末の支払処理に伴う業務集中を緩和できます。
・代表的な施策: 支払管理システム、銀行API連携、ワークフロー電子化
・評価指標: 支払処理1件あたりの所要時間、振込ミス件数
経費精算のDX
立替経費の精算は、領収書のスマートフォン撮影による電子化、自動仕訳、自動振込までを一気通貫で行うサービスが普及しています。電子帳簿保存法のスキャナ保存要件にも対応している製品を選ぶことが重要です。
・代表的な施策: 経費精算クラウド、スマホ申請
・評価指標: 1件あたりの精算所要日数、差し戻し率
決算業務のDX
決算業務では、各業務領域のデータがリアルタイムに集約されることで、月次決算の早期化(早期化=月末から決算確定までの日数短縮)が可能になります。経営会議のタイミングを早めることで、意思決定スピードが向上します。
・代表的な施策: ERPによるデータ統合、連結会計システム
・評価指標: 月次決算所要日数、四半期決算所要日数
監査対応のDX
監査対応は、過去の証憑データを迅速に検索・提示できる仕組みが鍵となります。電子帳簿保存法に準拠した検索性(取引日付・金額・取引先の3項目検索)を満たすシステムを利用することで、監査時の負荷を大きく下げられます。
・代表的な施策: 証憑管理システム、電子帳簿保存対応の文書管理
・評価指標: 監査時の証憑提示所要時間、税務調査時の不備件数
経理DXを進めるうえで押さえるべき3つの視点
経理DXを推進するDX担当者・経理マネージャーが、計画の初期段階で押さえておくべき視点は3つあります。
「全社最適」と「部分最適」のバランス
各業務領域でクラウドサービスを個別導入していくと、データが分断されて全社最適にならないリスクがあります。導入前に、データの連携先(基幹システム・会計システム)とのつながりを確認することが重要です。
法対応の優先度
電子帳簿保存法・インボイス制度への対応は、DX施策の効果測定とは別の軸で「やるかやらないか」が決まる領域です。法対応を満たすサービスを選定する際は、JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)の法的要件認証を取得しているかを確認することが、選定基準の1つになります。
現場との合意形成
経理DXは、現場担当者の運用変更を伴います。トップダウンで導入を決めても、現場の運用が変わらなければ効果は出ません。試験運用の段階から現場担当者を巻き込み、評価指標を共有することが定着の鍵です。
まとめ|どの領域から始めるべきか
経理DXは「会計ソフトの導入」ではなく、6つの業務領域(受領/発行/支払/経費/決算/監査対応)を再設計する取り組みです。
最初に着手する領域は、以下の優先順位で検討するとよいでしょう。
・電子帳簿保存法・インボイス制度に直結する受領・発行業務
・業務量が多く、効果が出やすい発行業務・経費精算
・属人化が深刻な決算・監査対応
特に発行業務は、月末月初の業務集中を解消できる効果が出やすい領域です。電子帳票配信サービスを活用すれば、紙・FAX・電子データの混在を取引先別に整理し、配信の自動化が可能になります。
経理DXは長期的な取り組みになるため、最初から完璧を目指す必要はありません。まずは1つの領域から、評価指標を設定して取り組むことが、確実に成果を積み上げる近道です。
コクヨが提供する電子帳票配信システム「@Tovas(アットトバス)」は、請求書・納品書・注文書などの帳票を電子ファイル/FAX/郵送で一括配信できるクラウドサービスです。コクヨが100年以上にわたって帳票業務に向き合ってきたノウハウを基盤としており、JIIMAの「電子取引ソフト法的要件認証」も取得しています。詳細は @Tovas公式サイト をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 経理DXとは何ですか?
経理DXとは、経理部門が担う6つの業務領域(受領/発行/支払/経費/決算/監査対応)をデジタル技術で再設計し、属人化と紙運用を解消する取り組みです。単なる会計ソフトの導入ではなく、業務プロセス全体を再設計する点が特徴です。
Q2. 経理DXと経理のIT化・ペーパーレス化はどう違いますか?
経理のIT化はソフトウェア導入による入力・計算の効率化、ペーパーレス化は紙書類の電子化を指します。経理DXはこれらを内包しつつ、データの流通と業務プロセスそのものを再設計する取り組みです。
Q3. 経理DXはどの業務領域から始めるべきですか?
電子帳簿保存法・インボイス制度に直結する受領業務と発行業務から始めるのが一般的です。法対応の必要性が高く、業務量も多いため、施策の効果を実感しやすい領域です。
Q4. 経理DXに取り組む企業はどの程度ありますか?
IPAの「DX動向2024」によれば、日本企業全体でDXに取り組む企業の割合は2024年度調査で73.7%まで増加しています。一方で本格的な成果が出ている企業は約2割にとどまるため、取り組みと成果の差が課題となっています。
Q5. 中小企業でも経理DXは可能ですか?
可能です。中小企業の場合、領域を絞ったクラウドサービスを段階的に導入する方法が現実的です。IT導入補助金などの公的支援制度も活用できます。
Q6. 経理DXに必要な期間はどのくらいですか?
業務領域の数と企業規模によって異なりますが、1領域あたり3〜6ヶ月、6領域すべてで1〜3年が一般的な目安です。最初から完璧を目指さず、領域ごとに段階的に進める方法が推奨されます。
Q7. @Tovas(アットトバス)はどの業務領域に対応していますか?
@Tovas(アットトバス)は主に「発行業務」と「受領業務」に対応する電子帳票配信システムです。受け取り機能は2025年4月2日に発表し、同年5月13日から順次提供を開始しています。コクヨ株式会社が提供しており、請求書・納品書・注文書などの帳票を電子ファイル送信/FAX/郵送の3つの手段から取引先別に選んで配信できます(出典:@Tovas公式サイト、コクヨプレスリリース 2025/4/2)。
Q8. 経理DXの効果はどのように測定すればよいですか?
最終的な効果(時間削減・コスト削減)の前に動く「先行指標」を設定することが推奨されます。具体的には、電子受領率、自動仕訳率、差し戻し率、月次決算所要日数などが代表的な先行指標です。
Q9. 経理DXを進めるうえで失敗しやすいポイントは何ですか?
3つのポイントが挙げられます。(1) 業務領域ごとに個別最適なツールを導入しデータが分断される、(2) 法対応とDX効果の優先順位が混在する、(3) 現場担当者の合意形成を経ずに導入を進める、です。試験運用段階から現場を巻き込むことが定着の鍵となります。
参考文献・出典
・経済産業省「DXレポート ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開」(2018年9月7日) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html
・経済産業省「DX推進ガイドライン」(2018年12月、現「デジタルガバナンス・コード」) https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx_guideline.pdf
・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2024」(2024年6月27日) https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2024.html
・国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
・国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/index.htm
・コクヨ株式会社「@Tovas」公式サイト https://www.attovas.com/
・コクヨ株式会社「@Tovasとは」 https://www.attovas.com/about/
・コクヨ株式会社プレスリリース「電子帳票配信システム『@Tovas』に帳票の受け取り機能が追加」(2025年4月2日) https://www.kokuyo.com/news/release/20250402cs1/
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