経理DXの第一歩|請求書受領と支払業務を変える3つのアプローチ【2026年最新版】
公開日:2026年6月9日 更新日:2026年6月9日
請求書受領業務の経理DXとは、取引先から届く請求書の受け取り・データ化・支払処理をデジタル技術で再設計し、手入力と紙保管をなくす取り組みです。
・受領業務は経理DXで最初に着手すべき領域。インボイス制度と電子帳簿保存法の両方に直結するため
・進め方は「電子受領」「AI-OCRデータ化」「受け取り代行+業務支援」の3アプローチに整理できる
・業務量・社内体制・取引先構成の3軸で、自社に合うアプローチを選ぶことが成否を分ける
この記事では月数百枚以上の請求書を処理する経理担当者に向けて、請求書受領と支払業務の経理DXを、どのアプローチで・どの順序で進めるべきかを解説します。
TOPICS
請求書受領業務の現状|なぜ「経理DXの第一歩」になるのか

請求書受領業務の経理DXとは、取引先から届く請求書の受け取り・データ化・支払処理をデジタル技術で再設計し、手入力と紙保管をなくす取り組みです。
経理DXは複数の業務領域にまたがる取り組みですが、その中でも「受領業務」は最初に着手すべき領域とされています。理由は3つあります。
受領業務は「相手都合」で形式がバラバラになる
自社が発行する請求書は形式を統一できますが、取引先から受け取る請求書は、紙の郵送・PDFのメール添付・FAX・取引先システムからのダウンロードなど、相手の都合で形式がバラバラになります。この「形式の不統一」が、受領業務に手作業が残り続ける根本的な原因です。
インボイス制度で確認・区分の負荷が増えた
2023年10月1日に開始したインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、買手が仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました(出典:国税庁「インボイス制度について」)。受領した請求書が適格請求書の要件を満たしているか、登録番号が有効かといった確認作業が新たに加わっています。
電子帳簿保存法で電子データの保存方法が問われる
電子帳簿保存法は令和3年度税制改正により、令和4年1月1日以降に行う電子取引でやり取りした請求書などのデータについて、電子データのまま保存することを義務付けました。その後、令和4年度税制改正で「宥恕措置」、令和5年度税制改正で新たな「猶予措置」が整備されましたが、原則として電子保存が必須である点に変わりはありません(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」)。
つまり受領業務は、「形式の不統一」「インボイス対応」「電帳法対応」という3つの課題が同時に乗っている領域です。だからこそ、経理DXの効果が最も大きく現れる第一歩になります。
IPAの「DX動向2024」によれば、日本企業のDX取組率は2024年度調査で73.7%まで拡大しています。一方で本格的な成果が出ている企業は約2割にとどまり、「着手はしたが成果が出ない」企業との差が広がっています(出典:IPA「DX動向2024」2024年6月27日)。受領業務のように課題が明確な領域から着実に進めることが、成果につながる近道です。
請求書受領業務を変える3つのアプローチ

請求書受領業務の経理DXは、大きく3つのアプローチに整理できます。どれか1つを選ぶというより、自社の状況に応じて組み合わせるのが実務的です。
| アプローチ | 仕組み | 向いているケース |
| (1) 電子受領プラットフォーム | 取引先に電子請求書を送ってもらい、データのまま受領する | 取引先が電子化に協力的/IT環境が整っている |
| (2) AI-OCRによるデータ化 | 紙・PDFの請求書をAI-OCRで読み取り、データ化する | 取引先が紙・PDFのまま送ってくる比率が高い |
| (3) 受け取り代行+業務支援 | 受け取りからデータ入力までを外部サービスに任せる | 経理人員が限られる/受領形式が多岐にわたる |
アプローチ(1):電子受領プラットフォーム
取引先に電子請求書(電子データ形式の請求書)で送ってもらい、紙やPDFを介さずデータのまま受け取る方法です。データが最初から構造化されているため、仕訳の自動生成や会計システムへの連携がスムーズになります。
ただし、すべての取引先が電子請求書に対応できるわけではありません。特に取引先の数が多い企業では、「電子化に協力してくれる取引先」と「紙のまま送ってくる取引先」が混在するのが実態です。
アプローチ(2):AI-OCRによるデータ化
紙やPDFで届いた請求書を、AI-OCR(文字認識技術とAIを組み合わせた読み取り技術)でデータ化する方法です。取引先に運用変更を求めずに、自社側でデータ化を完結できる点がメリットです。
注意点は、読み取り精度が100%ではないことです。読み取り結果を人がチェックする工程は残るため、「データ化の自動化」と「チェックの効率化」をセットで設計する必要があります。
アプローチ(3):受け取り代行+業務支援
請求書の受け取りそのものと、受け取った後のデータ入力作業を、外部のサービスに任せる方法です。電子ファイル・FAX・郵送など、どの形式で届いても一元的に受け取り、基幹システムへの入力までを支援するサービスが該当します。
経理人員が限られている企業や、受領形式が多岐にわたる企業では、自社でシステムを運用するより、受け取り工程ごとアウトソースする方が現実的なケースがあります。
コクヨ株式会社が提供する電子帳票配信システム「@Tovas(アットトバス)」は、2025年5月13日から帳票の「受け取り」機能の提供を順次開始しました。請求書・納品書・注文書などの帳票を「電子ファイル(Web・メール)」「FAX」「郵送」のいずれの形式でも受け取れ、受け取り後の基幹システムへのデータ入力作業もシステムと人によるサポートで支援します(出典:コクヨプレスリリース 2025/4/2)。アプローチ(3)に該当するサービスです。

アプローチ別の選び方|業務量・体制・取引先構成で判断する

3つのアプローチのどれを選ぶかは、次の3軸で判断します。
| 判断軸 | 確認すること | 判断の目安 |
| 業務量 | 月間の請求書受領枚数 | 数百枚以上なら自動化・代行の効果が大きい |
| 社内体制 | 経理・受領業務に割ける人員 | 人員が限られるなら代行型が現実的 |
| 取引先構成 | 電子化に対応できる取引先の比率 | 電子比率が低いならOCRまたは代行が必要 |
業務量で見る
月間の請求書受領枚数が数百枚を超えると、手入力にかかる時間が無視できない規模になります。業務量が多いほど、自動化や代行による削減効果が大きくなります。逆に月数十枚程度であれば、まずは電子受領への切り替えから始めるだけでも十分な場合があります。
社内体制で見る
経理担当者が1〜2名で、受領業務に専念できる人員がいない企業では、システムを導入しても運用が回らないリスクがあります。この場合は、受け取りからデータ入力までを任せられる代行型(アプローチ3)が現実的です。
取引先構成で見る
取引先のうち、どれくらいが電子請求書に対応できるかを確認します。電子化に対応できる取引先が多ければアプローチ(1)を中心に、紙・PDFが多ければアプローチ(2)または(3)を組み合わせます。実務上は「電子受領できる取引先は電子で、それ以外はOCRまたは代行で」という併用設計になることがほとんどです。
受領DXの落とし穴|インボイス対応と電子帳簿保存法の同時クリア
受領業務の経理DXでは、「業務効率化」だけを見てシステムを選ぶと、法対応で後から問題が起きることがあります。受領DXで必ず押さえるべき法対応のポイントを整理します。
インボイス制度への対応
インボイス制度では、買手が仕入税額控除を受けるために適格請求書の保存が必要です。受領DXのシステムを選ぶ際は、適格請求書とそれ以外の請求書を区分して管理できるか、登録番号の確認ができるかを確認します。
電子帳簿保存法の検索性要件
電子取引データを保存する際は、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できる状態にしておく必要があります。受領DXのシステムがこの検索性要件を満たしているかは、選定時の重要なチェックポイントです。
法対応を満たしているかを判断する材料の1つに、JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)の認証があります。たとえば「@Tovas」は、JIIMAの「電子取引ソフト法的要件認証」を取得しています(出典:@Tovas公式サイト)。こうした第三者認証の有無は、選定時の確認項目になります。
「効率化」と「法対応」を別軸で評価する
業務効率化の効果(時間削減・コスト削減)と、法対応(インボイス・電帳法)は、別の評価軸です。「効率化できるが法対応が不十分」なシステムを選ばないよう、選定段階で両方を確認することが重要です。
支払業務まで連動させる経理DX|「受領→計上→支払」の自動化
受領業務のDXは、その先の「計上」「支払」とつなげることで効果が最大化します。受領だけを電子化しても、その後の支払処理が手作業のままでは、業務全体の時間は大きく減りません。
受領から支払までの一連の流れ
請求書受領業務は、実際には次のような一連のプロセスです。
・請求書の受領(電子・紙・FAX)
・内容の確認(金額・取引先・適格請求書要件)
・会計システムへの計上(仕訳)
・支払予定の管理
・振込データの作成・送金
・支払後の消込
このうち受領(1〜2)だけをDXしても、計上以降(3〜6)が手作業なら、全体の所要時間は限定的にしか減りません。
支払業務のDXで押さえるポイント
支払業務のDXでは、承認ワークフローの電子化と、銀行API連携による振込データの自動作成が中心施策になります。承認をシステム上で完結させることで、月末の支払処理に伴う業務集中を緩和できます。
データを分断させない
受領・計上・支払で別々のシステムを使うと、システム間でデータの再入力が発生し、DXの効果が薄れます。受領DXのシステムを選ぶ段階で、会計システムや基幹システムとのデータ連携ができるかを確認しておくことが重要です。
90日ロードマップ|段階的に進める受領DXの実装手順

受領業務のDXは、一度にすべてを変えようとせず、段階的に進めるのが定石です。以下は90日(約3ヶ月)を想定したロードマップの例です。
| 期間 | フェーズ | 主なタスク |
| 1〜30日目 | 現状把握 | 月間受領枚数の集計、受領形式の内訳調査、処理時間の計測 |
| 31〜60日目 | 設計・選定 | 3アプローチから自社方針を決定、法対応要件の確認、システム選定 |
| 61〜90日目 | 試験運用 | 一部の取引先・帳票で試験運用、評価指標の測定、現場へのヒアリング |
| 90日目以降 | 本格展開 | 対象範囲の拡大、支払業務への連動、定例での効果検証 |
効果検証で使う指標
受領DXの効果は、以下の指標で測定します。
・電子受領率:全受領請求書のうち電子データで受領できた割合
・月間処理時間:受領から計上までにかかった総時間
・差し戻し率:内容不備で差し戻した件数の比率
・支払漏れ・遅延件数:支払処理で発生したミスの件数
最初から完璧を目指さず、試験運用で指標を測りながら範囲を広げることが、定着の鍵です。
実例で見る受領DXの効果
受領DXの効果をイメージするために、公開されている試算例を紹介します。
コクヨが公開している「@Tovas」の受け取りサービスの試算例では、製造・販売業で月4,000枚の注文書を、FAX・メール・郵送など様々な方法で受け取り、基幹システムに入力していた業務について、作業時間が約670時間から約67時間へと、約10分の1に短縮できるとされています(出典:@Tovas公式サイト。削減時間は@Tovasを利用した場合の想定数値としてコクヨが算出)。
この試算が示すのは、「受け取り形式が多岐にわたる」かつ「枚数が多い」という条件が重なるほど、受領DXの削減効果が大きくなるという点です。自社の月間受領枚数と受領形式の内訳を把握することが、効果を見積もる第一歩になります。
まとめ
請求書受領業務は、「形式の不統一」「インボイス対応」「電子帳簿保存法対応」という3つの課題が同時に乗っているため、経理DXの第一歩として着手効果が大きい領域です。
進め方は、(1) 電子受領プラットフォーム、(2) AI-OCRによるデータ化、(3) 受け取り代行+業務支援、の3アプローチに整理できます。業務量・社内体制・取引先構成の3軸で自社に合うアプローチを選び、多くの場合は複数を併用します。
受領だけでなく、その先の「計上」「支払」まで連動させることで、経理DXの効果は最大化します。90日のロードマップで段階的に進め、電子受領率や処理時間などの指標で効果を測りながら範囲を広げていくことが、確実な成果につながります。
コクヨが提供する電子帳票配信システム「@Tovas(アットトバス)」は、2004年に帳票を「送る」サービスとして提供を開始し、2025年に「受け取る」機能を加えたことで、帳票の送受信を一元的に扱えるサービスになりました。コクヨは1905年の創業以来、帳簿・伝票の製造販売を通じて120年以上にわたり帳票業務に携わってきた企業です。受領業務のDXを検討する際の選択肢の1つとして、詳細は @Tovas公式サイト をご確認ください。
経理DX全体の業務領域マップについては、関連記事「経理DXとは?業務領域別の全体マップと進め方」もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 請求書受領業務の経理DXとは何ですか?
請求書受領業務の経理DXとは、取引先から届く請求書の受け取り・データ化・支払処理をデジタル技術で再設計し、手入力と紙保管をなくす取り組みです。受領業務はインボイス制度と電子帳簿保存法の両方に直結するため、経理DXの第一歩として着手効果が大きい領域です。
Q2. なぜ受領業務から経理DXを始めるとよいのですか?
受領業務には「取引先都合で形式がバラバラになる」「インボイス制度で確認作業が増えた」「電子帳簿保存法で電子保存が必要」という3つの課題が同時に乗っているためです。課題が明確な領域から着手することで、DXの効果を実感しやすくなります。
Q3. 請求書受領業務を変えるアプローチにはどのようなものがありますか?
大きく3つあります。(1) 取引先に電子請求書を送ってもらう電子受領プラットフォーム、(2) 紙・PDFをAI-OCRでデータ化する方法、(3) 受け取りからデータ入力までを外部に任せる受け取り代行+業務支援です。実務では複数を併用するのが一般的です。
Q4. 3つのアプローチはどう選べばよいですか?
「業務量(月間受領枚数)」「社内体制(割ける人員)」「取引先構成(電子化対応の比率)」の3軸で判断します。業務量が多く人員が限られ、受領形式が多岐にわたるほど、代行型のアプローチが現実的になります。
Q5. インボイス制度への対応で受領業務は何が変わりましたか?
2023年10月1日のインボイス制度開始により、買手が仕入税額控除を受けるには原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。受領した請求書が適格請求書の要件を満たすか、登録番号が有効かを確認する作業が新たに加わっています。
Q6. 電子帳簿保存法では受領した請求書をどう保存すればよいですか?
電子取引でやり取りした請求書データは、電子データのまま保存する必要があります。保存の際は「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できる状態にしておくことが求められます。詳細は国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトで確認できます。
Q7. 受領業務のDXは支払業務とつなげるべきですか?
つなげることを推奨します。受領(受け取り・確認)だけをDXしても、その後の計上・支払・消込が手作業のままでは業務全体の時間は大きく減りません。受領から支払までを一連のプロセスとして設計することで、経理DXの効果が最大化します。
Q8. @Tovas(アットトバス)は請求書受領にどう使えますか?
@Tovas(アットトバス)はコクヨ株式会社が提供する電子帳票配信システムで、2025年5月13日から帳票の「受け取り」機能の提供を順次開始しました。請求書・納品書・注文書などを「電子ファイル(Web・メール)」「FAX」「郵送」のいずれの形式でも受け取れ、受け取り後の基幹システムへの入力作業もシステムと人によるサポートで支援します。本記事のアプローチ(3)「受け取り代行+業務支援」に該当します。
Q9. 受領業務のDXはどのくらいの期間で進めればよいですか?
一度にすべてを変えず、段階的に進めるのが定石です。目安として、最初の30日で現状把握、次の30日で設計・システム選定、その次の30日で試験運用、という90日のロードマップで進め、その後に対象範囲を拡大する方法が推奨されます。
参考文献・出典
・国税庁「インボイス制度について」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm
・国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2024」(2024年6月27日) https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2024.html
・コクヨ株式会社「@Tovas」公式サイト https://www.attovas.com/
・コクヨ株式会社「@Tovas」受け取りサービス紹介ページ https://www.attovas.com/lp08
・コクヨ株式会社プレスリリース「電子帳票配信システム『@Tovas』に帳票の受け取り機能が追加」(2025年4月2日) https://www.kokuyo.com/news/release/20250402cs1/
関連記事(内部リンク)
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