社内DXを始めるべき理由は6つ!失敗しないための成功ポイントを解説
公開日:2023年8月17日 更新日:2024年4月17日
働き方改革の推進や労働人口の不足といった背景もあり、DXに取り組んでいる企業も少なくありません。DXを検討してはいるものの、何から始めればいいのか分からないという企業も多いのではないでしょうか。
急に大規模な変革をしてしまうと、従業員に大きな負担がかかってしまうため、まずは社内業務のDXから始めることがおすすめです。今回は、社内DXを始めるべき理由や、成功させるためのポイントなどを解説します。
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社内DXとは
DXは、デジタル技術の活用によりビジネスモデルを大きく変革することを意味します。つまり社内DXとは、社内業務をデジタル化し、業務プロセスや働き方などを変革する取り組みのことです。
DXは本来、新しいハードウェアやソフトウェアの導入、サービスの購入といった初期投資が必要です。社内DXでは、DXによる変革が社内に限定されるため、DX推進の第一歩として取り組みやすいとされています。
社内DXが成功すれば、業務効率化やコスト削減につながる可能性があります。デジタルツールを利用してカスタマーサービスを自動化することは、社内DXの典型的な例です。自動化すれば、顧客体験の改善にもつなげられます。
社内DXを始めるべき6つの理由
社内DXを始めることで、DX推進の土台をつくることができます。また働き方改革の推進や企業の競争力強化、人材不足、災害時の対策にも有効です。さらに税制面での優遇を得られる可能性もあります。ここでは社内DXを始めるべき6つの理由を紹介します。
DX推進の土台を築くため
社内DXから始めるべき理由の一つは、DX推進の土台を築くためです。ビジネスモデルを変革するには、大規模なDXが必要になるため、簡単に取り組めることではありません。初期投資が必要になるだけでなく、企業の組織構造や文化そのものを変える可能性もあります。
しかし社内DXであれば、取り組みやすいところから少しずつ導入可能です。社内DXを始めることでDX推進の意識を高め、大規模な変革をするための土台を築くことができるようになるでしょう。
例えば社内DXにより、従業員はデジタルツールやテクノロジーに慣れ親しみ、デジタル化の重要性を理解するようになります。大規模なDXの推進に向けての、意識改革の一部として機能するでしょう。
働き方改革を推進するため
社内DXは、働き方改革を推進するといった観点でも重要です。働き方改革の推進により、時短勤務やテレワークなどを導入する企業も増えています。社内DXを進めることで、オフィス以外の場所でも業務を進めやすくなるでしょう。例えばクラウドベースのツールやプラットフォームを用いることで、従業員はオフィス以外の場所からでもアクセスし、共同作業を行えます。
社内DXによって業務プロセスを自動化することで、残業時間の削減につながる可能性があることも重要なポイントです。繰り返しの手作業や時間を要する作業を自動化すれば、従業員はより価値の高い作業に集中できます。こうした取り組みは、従業員の満足度とモチベーションを向上させ、中長期的な離職率の低減にも寄与するでしょう。
企業の競争力を強化するため
社内DXは、企業の競争力を強化するためにも必要です。グローバル化や市場競争の激化により、企業の競争力強化には生産性の向上が欠かせません。社内DXにより日々の業務が効率化すれば、先述のように従業員がコア業務に集中できるようになります。
社内DXによって従業員が重要な業務に集中できるようになる具体的な事例としては、データ分析があります。社内DXによって、大量のデータを素早く効果的に処理できるようになれば、より迅速かつ精度の高い意思決定が可能になるでしょう。利益につながる業務に集中しやすい環境を構築できるようになるため、企業の競争力を強化できる可能性があります。
人材不足に対応するため
人材不足に対応するといった側面も見逃せません。現代は、労働人口の減少により、企業や業種によっては人手不足が深刻化しています。人手不足の指標として有効求人倍率がよく使われていますが、厚生労働省の発表によれば、2022年平均の有効求人倍率は1.28倍です(前年に比べて0.15ポイント上昇)。
しかし思うように人材を採用できないような状態でも、社内DXによって業務の自動化や効率化が実現でき、少ない労働力で高い生産性を維持できる可能性があります。テレワークの導入も可能になり多様な働き方が実現できるため、これまで採用が難しかったオフィスから遠いエリアに住む人や海外の人材も活用できるようになるでしょう。
※参考:厚生労働省 . 「一般職業紹介状況(令和4年12月分及び令和4年分)について」
BCP対策として有効なため
社内DXは、BCP対策としても有効です。BCP「事業継続計画」とは、災害やテロなどの異常時でも事業活動の継続ができるように計画的に準備しておくことで、企業価値や信頼性を保つために欠かせません。
社内DXを進めることでデータを安全に管理し、非常時でもデータの損失を防げます。例えばクラウドのプラットフォームを活用すれば、重要なデータやシステムを安全に保管し、適切なセキュリティ措置を講じることが可能です。仮に本社が被害に遭った場合であっても、支社や支店、サテライトオフィスなど別の場所から事業を継続できます。
税制面での優遇を受けられるため
税制面での優遇を受けられることも重要なポイントになります。DX投資促進税制とは、企業がDXに関する投資を行うことを奨励するための税制の一つです。DXに取り組む企業に対して、税額控除または特別償却などの税制上の優遇措置を実施しています。
DX投資促進税制の恩恵を受けるためには、デジタル要件と企業変革要件の両方を満たす必要があります。具体的な要件は以下のとおりです。
デジタル要件 | ・データ連携を行う ・クラウド技術を活用する ・経済産業省令に定められた認定基準に適合する |
企業変革要件 | ・生産性向上または売上上昇が見込まれること ・前向きな内容であること ・全社の意思決定に基づいていること |
上記に加えて、DX投資促進税制の対象となるには、青色申告法人で産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定が必要です。
※参考:経済産業省 . 「DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制の見直し及び延長 」
社内DXの取り組み事例
社内DXの取り組みには、人材情報の一元管理やAIチャットボットの導入、マニュアルの電子化などさまざまな事例があります。ここでは6つの事例を取り上げるので、社内DXを始める際の参考にしてください。
人材情報の一元管理
社内DXの1つ目の取り組み事例は、人材情報の一元管理です。具体的には、従業員のスキルやパフォーマンス、進行中のプロジェクトといったさまざまな情報を一つのシステム内に集約することを指します。従業員の状況を一括で管理することで、人材管理や人材配置、人材育成などをスムーズに行えるようになることが大きなメリットです。評価システムと併用すれば、人事評価にも役立てられます。
人材情報が一つのシステムに集約されることで、データの入力や検索、分析がより効率的になることも大きなポイントです。人事担当者の時間を節約し、他の重要なタスクに注力できるようになります。人材情報を一元管理するためには、人事管理システムや労務管理システム、タレントマネジメントシステムなどを導入することが一般的です。
AIチャットボットの導入
社内DXの2つ目の取り組み事例は、AIチャットボットの導入です。チャットボットとは、人間が自然言語で入力したメッセージに自動的に応答するプログラムのことを指します。主にWebサイトなどで活用され、顧客サービスやFAQの回答といった目的で使用されます。
昨今では、社内の問い合わせ業務を効率化するために、AIチャットボットを導入する企業も増えています。AIチャットボットによって、組織拡大により社内問い合わせが増え、コア業務に専念できないといった課題を解決しやすくなるでしょう。人的リソースをより効率的に使用できる、24時間対応のサービスを提供できるといったメリットもあります。
AIチャットボットは、人事や総務、経理などさまざまな部門で活用可能です。
マニュアルの電子化
社内DXの3つ目の取り組み事例は、マニュアルの電子化です。社内で使用するマニュアルを電子化することで、アクセス性が向上し、業務効率化につながりやすくなります。編集や修正も簡単にできるようになるため、常に最新の情報を確認できることも重要です。さらにマニュアルの電子化は、社内共有が容易で、業務の正確性向上や属人化の防止にもつながりやすくなります。
マニュアルの電子化には、クラウドベースのドキュメンテーションソフトや、企業内部の情報共有プラットフォームを使用することが一般的です。AIやチャットボットを活用して、マニュアルの内容を自動的に検索・参照するようなシステムを作る方法もあります。
ビジネスチャットの導入
社内DXの4つ目の取り組み事例は、ビジネスチャットの導入です。主に社内コミュニケーションを活性化させることを目的として、ビジネスチャットを導入する例も珍しくありません。
ビジネスチャットの導入の大きなメリットが、コミュニケーションの効率化です。リアルタイムな情報の共有や複数人での共有が可能で、社内コミュニケーションのスピードと効率性を大きく向上させます。
過去のやり取りをさかのぼって検索できるため、情報の確認がしやすいこともメリットです。例えばビジネスチャットの履歴を見れば、過去のプロジェクトのディスカッションや決定事項、問題解決のための手順などを後から確認できます。もし新たな問題が発生した場合であっても、以前の経験から学びつつ対処しやすくなるでしょう。
経理業務の電子化
社内DXの5つ目の取り組み事例は、経理業務の電子化です。経理部門では、さまざまな業務で電子化が進んでいます。帳票書類の電子発行・送付や経費精算のシステム化など、システムの導入によりDXが可能になります。
経理は、スピードと正確性が求められ、もしトラブルが発生すれば企業の信用問題にもつながる重要な業務です。DXを導入することで業務を効率的に進められるようになり、ヒューマンエラーの削減にもつながります。
これらの取り組みは労力の削減だけでなく、業務プロセスの透明性と精度の向上、そしてコンプライアンス遵守の強化にも貢献します。経理業務の電子化を考えているのであれば、外部サービスを検討してみることがおすすめです。
RPAソリューションの導入
社内DXの6つ目の取り組み事例は、RPAソリューションの導入です。RPAは「Robotic Process Automation」の略で、普段の業務で行われている入力や転記、集計などの作業をロボットが代行して行うことを指します。
例えば売上データの入力や実績の集計作業、WebサイトからExcelへの転記、定型メールの送付などを自動化できます。定型業務をロボットに任せることで、従業員がよりクリエイティブな業務に集中できるようになるでしょう。
さらにRPAソリューションは、拡張性が高いといったメリットもあります。ビジネスのニーズに応じてRPAの数を増やしたり減らしたりできるため、ビジネス規模の変化やそれに伴う業務量の増減にも柔軟に対応可能です。
社内DXに失敗しないための成功ポイント
社内DXに失敗しないためには、目的を明確にした上で、社内全体でDXに対する理解を深めることが大切です。また特定の部署や業務からスモールスタートで始めると良いでしょう。さらに人材の確保や社内システムの見直しも必要です。ここでは、社内DX成功のポイントを紹介します。
目的を明確にする
まずは、目的を明確にすることが重要です。DXは、テクノロジーの導入だけではなく、組織の文化や働き方の根本的な変革も意味します。このような大規模な変化を達成するためには、明確なビジョンと戦略が欠かせません。経営層が中心となって、DXの全体像を把握し、ビジョンや方向性を明確にした上で社内に浸透させていく作業が必要です。
目的が明確であれば、社内DXの達成度を測定し、改善点を特定することも容易になります。例えばプロジェクトの進行状況を追跡し、必要な場合には戦略を調整する際に、当初設定したビジョンの内容が大きく役立つでしょう。目的の明確化は、社内DXの取り組みを計画・遂行し、最終的に成功させるための基礎となります。
社内全体で理解を深める
社内全体で理解を深めることも重要です。経営層が主体となって目的を明確化することはもちろん、業務を実際に遂行する立場である現場の担当者も、社内DXに関して熟知していなければなりません。
DXにはコストがかかるため、経営層にDXの重要性を理解してもらうことが大切です。また従業員に対しては、研修や勉強会を実施しDXに対する理解を深めてもらいましょう。DXの推進はこれらの2つの方向性で進めていく必要があります。
社内全体で理解を深める際は、推進部署の設置や推進リーダーの配置を検討することも重要です。これらは社内DXの前準備にあたる段階ですが、この部分の完成度によって、社内DXの成功が決まってくると言っても過言ではありません。
DX人材の確保・育成を進める
社内DXを成功させるためには、DX人材の確保・育成も欠かせません。DX人材とは、文字通りDXに精通した人材のことです。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」によれば以下の職種が該当します。
・プロダクトマネジャー
・ビジネスデザイナー
・テックリード(エンジニアリングマネジャー、アーキテクト)
・データサイエンティスト
・先端技術エンジニア
・UI・UXデザイナー
・エンジニア・プログラマ
ただし、DX人材は不足しており採用が難しい可能性があります。さらにDXに関する知識だけでなく、社内業務に精通している人材も必要です。そのため、従業員にDX研修に参加してもらい、育成していくといった方法を採用している企業もあります。
※参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA). 「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査 」
スモールスタートで始める
スモールスタートで始めることも、社内DXを成功に導く重要なポイントです。主な理由としては、従業員の負担軽減が挙げられます。大規模な導入を一度に行うと、従業員にとって適応・学習に伴う負担が大きくなる可能性があります。場合によっては通常業務に支障をきたすおそれもあるため、小規模から始めて、従業員への影響を最小限に抑えつつスムーズな導入を目指しましょう。
社内DXは、特定の部門や業務から始め、段階的に導入範囲を広げていくことがおすすめです。これにより、導入プロジェクトをより管理しやすくすると同時に、導入の経験を次のステップに活かしやすくなります。スモールスタートによる社内DXは、効果的な変革を実現しつつ、組織や従業員に対する影響を最小限に抑えるための最適なアプローチです。
社内のシステムを見直す
これまでICT(情報通信技術)を活用していなかった企業では、DXに向けてシステムの導入を検討することも重要です。本記事でも触れているように、ビジネスプロセスの効率化やデータ分析など、DXの多くの側面に影響を与えます。
すでにシステムを導入している場合でも、システムの操作性や導入の費用対効果などを考慮しつつ、必要に応じて見直すことが大切になります。新しいシステムに切り替えることで、DXを進めやすくなり、生産性が向上する可能性があるからです。
システムの見直しや更新は、企業がデジタル時代に対応する上で不可欠なステップです。企業の現状とニーズに応じて最適なシステムを選択し、効果的に活用することを念頭に置きましょう。
社内DXに活用できる主なツール
社内DXに活用できる主なツールには、RPAツールやBIツール、オンラインストレージなど、さまざまなものがあります。タスク管理ツールや人事管理システム、電子帳票システムなどのように特定の作業や業務を自動化するツールも便利です。ここでは、それぞれのツールを詳しく解説します。
RPAツール
RPAツールは、手作業で行っている定型業務をロボットで自動化するツールです。受発注データの取り込み、在庫データの確認・自動発注、問い合わせへの自動対応などに向いています。
RPAツールのメリットは、基本的な操作であれば、プログラミングの知識がなくても活用できることです。効果的に活用できれば、ヒューマンエラーの防止や労働力不足の解消、生産性の向上などにつながりやすくなります。
BIツール
BIツールとは、企業の意思決定を支援するために、保有しているデータを分析して経営に役立てるツールです。経営分析や財務分析、営業分析、売上分析、人事データ分析などさまざまなシーンで利用されています。
BIツールのメリットは、複数の部門に散在しているデータを収集して分析・可視化できるため、現状把握がしやすくなることです。集計やレポートの作成を瞬時に行えるため、作業時間も大幅に削減できます。
オンラインストレージ
オンラインストレージとは、クラウド上でファイルを共有できるストレージ領域のことです。インターネット環境があれば、オフィス以外の場所からもデータの確認や共有ができます。
ストレージ内でデータを一元管理でき、インターネット接続があればどこからでもアクセスできるため、共有の工数を減らせることが大きなメリットです。データの量が増えてもストレージ容量を容易に増やせるため、特に大規模な事業所で有効活用できます。
タスク管理ツール
タスク管理ツールは、個人やチームが仕事を効率的に進行・管理するためのソフトウェアやアプリケーションです。チーム内の連携を深めるにはタスク管理が重要ですが、フリーアドレスやテレワークの導入により、チーム内のタスクが把握しづらくなる可能性があります。
タスク管理ツールを導入すれば、オフィス以外の場所でもメンバーの進捗状況を確認できます。メンバーの進捗状況によっては、業務の配分を変更するなど、臨機応変な対応も可能です。
人事管理システム
人事管理システムは、従業員の人事や労務、評価などに関わる情報を一元管理できるシステムです。年末調整の手続きやマイナンバーの管理、評価シートの作成などをシステム上で行えるため、労務関係の手続きを効率化できます。
人材データベースの作成や組織分析、目標・進捗管理などの機能により効率的な人事評価が可能になることも、人事管理システムのメリットです。データを活用した人事戦略を支え、組織の競争力を強化する面でも役立つでしょう。
電子帳票配信システム
電子帳票配信システムは、請求書などの帳票書類の送付作業を効率化できるシステムです。電子データのまま企業間のやり取りも可能になるため、書類の封入や郵送などの手間も省けます。また帳票書類をデータで保管できる機能をもつサービスもあるため、検索性やセキュリティの向上などが期待できるでしょう。
さらに電子帳票配信システムは、一般的に、他のビジネスシステムや外部システムと連携しやすい設計になっています。例えば経理システムやCRM(顧客関係管理)システムなどと連携して、各種の帳票を自動的に生成することも可能です。
まとめ
社内DXに取り組むことで、業務の効率化や生産性向上につながる可能性があります。ただし最初から大きな変革を実行すると、従業員に大きな負担をかけることになるため、社内DXを進める際はスモールスタートで始めることがおすすめです。加えて、DX人材の確保やシステムの導入も検討しましょう。
コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』は、社内DXの推進におすすめです。帳票書類を電子化してWeb上で送信できるため、業務の効率化につながります。郵送やFAXでの送信も可能なので、取引先に応じて送付方法を選べることが大きなメリットです。
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@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)