バックオフィスDXとは?導入メリットや失敗しないコツを解説
公開日:2023年9月19日 更新日:2024年4月17日
経理や総務、人事などの管理部門はバックオフィスとも呼ばれ、企業の営業活動を支える重要な役割を担っています。しかし専門性の高い業務もあるため、人手不足や長時間労働などの課題を抱える企業も少なくありません。
こうした問題を解決するために、DX化やその過程でのデジタル化を目指す企業もあるでしょう。
そこで本記事では、バックオフィスのDX化とは何か、バックオフィスにDXを導入するメリットや失敗しないコツなどをご紹介します。
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TOPICS
バックオフィスDXとは
バックオフィスとは、会社の業務のうち主に会社内部の管理や調整を行っている部署のことです。会社の仕事はフロントオフィスとバックオフィスに分かれます。フロントオフィスは営業やサービス開発など顧客と接する機会が多く、利益に直結する部署を指します。対してバックオフィスの部署は経理・人事・法務など、どちらかといえば内部の業務に注力しています。
バックオフィスDXとは、こうした経理・人事などの業務をDXする試みのことです。デジタル化による作業効率化だけでなく、最終的には業務体制の抜本的な改善を目指します。具体的には請求書を電子データで発行する、承認印をデジタル印鑑に切り替えることなどが含まれます。テレワークなど既存と異なる働き方を進めるものとして、近年注目を集めているのです。
バックオフィスDXの必要性
バックオフィスDXの必要性について、以下で3点ご紹介します。
働き方改革への対応
感染症の流行や労働に対する若い層の意識の変革などがあり、日本でも働き方改革が進んでいます。従来のように会社に定時で勤めるのではなく、テレワークによる遠隔地からの勤務やフレックス制による自由な時間での出勤も2000年代よりはるかに一般的になりました。
こうした多様な働き方を実現するには、離れた場所や短い時間でも通常通りに業務をこなせるよう仕事内容をデジタル化していく必要があります。
DX化を後回しにすると、例えば、請求書が本社に届くようであれば確認のためにわざわざ出社しなければなりません。
働き方改革を進めようという全国的な取り組みを受け、バックオフィス業務もデジタル化が求められています。
人手不足の解消
2023年現在、バックオフィスの人材は売り手市場と言われています。少子高齢化が進むことで、労働力人口の割合は2060年には約44%に低下するという調査もあります。コミュニケーションツールをはじめとした新しいツールや技術に対応するために、人材の争奪戦が発生しつつあるのが現状です。
業務を限られた人数の中でやりくりするために、まずは今ある仕事の労力を減らすことが求められています。バックオフィスDXのメリットの一つは業務の効率化です。同じ業務をより少ない人的コストで回せるようになれば、過剰労働を防いで労働環境を改善できるでしょう。
競争力の強化
DX化を急速に進めないと、今後企業の競争力が大きく低下するのではという仮説があります。2018年に経済産業省が発表したDXレポートによると、このままDX化が推進されなければ2025年以降に最大で12兆円もの経済的な損失が起きると推定されています。
2025年に予期されている経済損失にはさまざまな要因が絡んでいますが、例えば既存システムのブラックボックス化による管理不能、サイバーセキュリティの脆弱化などが理由として挙げられます。こうした今ある課題を解決するには業務の内容と体制を両面から見直していく必要があるでしょう。
2025年の崖と呼ばれるこの危機を脱するには、会社や経済全体がDXに乗り出すことが重要です。まだDXに取り組めていない企業も、まずはバックオフィスからDXを進め、ノウハウを蓄積する必要があるでしょう。
バックオフィスDX導入のメリット
バックオフィスDXは2025年の崖を回避するためのステップであると同時に、正しく進めることで会社の運営にもメリットをもたらします。具体的な利点を以下で4点ご紹介します。
業務精度の向上
経理などのバックオフィス業務は元から細かな数字や重要な請求書などの帳票を扱うことが多く、これらの書類の作成やチェックに時間がかかることが課題でした。特に複数人が目を通す場合は、対象の社員の手が空くまで待たなければならないというタイムロスも発生します。
こうした時間のかかる業務のうち、例えば数字入力ならチェックシステムを導入すれば確認の手間を大きく減らせます。誤入力があれば自動で判断し修正できるため、待機時間や人的コストの削減に直結します。速やかにミスを発見し修正できるため、業務精度の向上につながるでしょう。
多様な働き方の実現
バックオフィスの業務は従来出社しないとできない仕事と考えられていましたが、デジタル化やDX化が進むことでオフィスではない場所でも業務を行えるようになるでしょう。多様な働き方が実現すれば、労働環境の改善や離職の防止につながると考えられます。
例えば完全にデジタルデータでやりとりできるようになれば、家庭の事情や体調などで時短での労働や家での勤務を希望する人も働けます。働く側としては自分に無理のない形で業務に従事できるようになり、さらに雇う側としても労働力を取りこぼさないというメリットがあります。
属人化のリスクを解消
属人化とは、業務を進めるのに必要な中核のノウハウや技術が特定の人に集中してしまう現象です。デジタル化を進め、誰でも同じように業務を進められるようになれば、属人化のリスク解消に役立ちます。
知識を持つ人が会社を離れてしまうと業務を今まで通りに進められなくなることから、属人化は回避すべきリスクとされています。専門性があれば長く働けることから、バックオフィス業務は属人性が特に進みやすい分野です。
こうした課題点を解消するために、デジタル化やDX化による業務の標準化が重要視されています。
生産性の向上
バックオフィスのDX化を進めることで、承認待機による時間的コストの浪費やダブルチェックのための人的コストを削減することができます。請求書の例でいえば、内容に不備がないか社内で複数回チェックした後、さらに請求書を印刷し郵送する必要がありました。
請求書送付のための業務を自動化すれば、相手方へ瞬時に情報を届けることができます。その分で空いた時間は他の業務に充てられるため、同じ社員規模であってもさらなる事業拡大や業務の質の向上が期待できるでしょう。
バックオフィスDXを進めるための3ステップ
DX化はデジタル技術を通じて最終的には業務体制そのものの抜本的な改革を目指しています。そのため、いきなり全社規模でDXを進めるのは得策ではありません。今回は特にバックオフィス分野に絞り、スムーズにDX化を進めるためのステップについて確認します。
1.業務の現状を把握する
まずは既存の業務を洗い出し、DX化すべき部分とそうでない部分を明確に区別しましょう。デジタル化を正しく進めれば一定の業務を効率的にこなせるようになりますが、手作業で進めた方がむしろ効率的である業務も存在します。個々の業務がDX化に向いているかどうかは会社の方針や業務体制によっても異なるでしょう。
まずは業務フローや作業の内容を整理し、現在のバックオフィスが抱える課題点を明確にしましょう。それからDX化が有効になりそうな箇所を選定し、具体的な戦略を練ることをおすすめします。
2.システムやサービスを選定する
一口にバックオフィスのDX化と言っても、それぞれが抱える課題は会社や部署によって異なります。自社に適したシステムやサービスを選ぶことで、デジタル化の恩恵をよりはっきりと感じられるようになるでしょう。
ある企業では請求書の数が多すぎるため処理に時間がかかり、別の企業では作業要員が少なく一人ひとりにかかる負担が重いのかもしれません。前者であれば請求書の管理・送付ツール、後者であれば定型業務を肩代わりしてくれるシステムなどが選択肢として考えられます。
3.導入後の検証を行う
導入後も検証を行い、新しく発生した課題や予想と異なっていた点に対して分析を深めることが肝心です。DX化は一朝一夕に進められるものではありません。また業務面だけでなく、社員のモチベーションの変化やつまずきなど心理的な面にも目を向けると良いでしょう。
バックオフィスDXはシステムを導入して終わりではありません。一つひとつの課題に対してPDCAを回すことで、最終的な成功につなげましょう。
バックオフィスDXの具体的な取り組み方法
バックオフィスDXはやみくもに取り組んでも思うような効果を得られません。まずは具体的にどのような業務がDX化に向いているかを確かめましょう。
業務のペーパーレス化
デジタル化によって期待される変化のうち、最も分かりやすいものの一つが業務のペーパーレス化です。ペーパーレス化とは、従来紙で作成・送付していた請求書などの帳票や資料をデータでやりとりするよう変更することです。Web上でやりとりができるため働く場所を限定しない点や、紙資源を使わないことで環境の保全にも有効な点が注目を集めています。
ワークフローシステムを利用すれば、従来紙面でやりとりしていた申請や承認をWeb経由でできるようになります。2025年の壁に備え、こうしたシステムを導入する企業は今後も増え続けていくでしょう。
RPAの活用
RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、従来は人が行っていた単純な業務を自動で行うツールのことです。この場合のロボットとは人型の機械ではなく、定型業務をすばやく正確に行ってくれるAIなどを指します。
RPAが得意とする業務は以下のとおりです。
・データの登録や転記
・データのチェック(顧客データや異常値のチェック)
・社内アプリの操作代行(メールの送信、ワークフローの実行など)
人間がダブルチェックしていた部分をRPAに任せることで、ミスのない処理結果をより簡単に手に入れることができるでしょう。
クラウドサービスの導入
クラウドサービスとは、オンライン上のデータやシステムを都度呼び出して利用できるサービスです。ソフトウェアやデータを個々のパソコンにインストールすることなく使えることから、自社のサーバーを必要としない、インターネットさえあれば遠隔地でも利用できるといったメリットがあります。
円滑なテレワークにはクラウドサービスの導入が欠かせません。ただしセキュリティ対策がずさんなサービスでは情報漏洩の心配があるため、利用する際はセキュリティが強固なものを選定しましょう。
AIやチャットボットの活用
社内からの問い合わせ対応もバックオフィスの重要な業務です。しかしこうした問い合わせの中には調べれば簡単に分かるものや、問い合わせ件数の多いよくある質問も含まれており、時間をかけて対処すべき質問への返答業務を圧迫してしまいます。
チャットボットを導入することで、よくある質問に自動で答えられるようになります。チャットボットとはAIを利用した自動応答システムのことで、事前に登録しておいた答えを質問内容に合わせて返送することが可能です。対応業務の負担軽減が期待できます。
バックオフィスDXで失敗しないためのコツ
バックオフィスDXを達成することは決して簡単なことではありません。しかし手順を踏み、社内からの理解を得られれば実現に近づけることができます。
バックオフィスDXで失敗しないためのコツを、あらかじめ以下で確認しておきましょう。
経営陣のリーダーシップ
バックオフィスDXの実現には複数の部門や部署の連携が欠かせません。経営層がDX化の意義や目的を明確にし、リーダーシップを発揮して推進していくことが鍵となります。
現場ベースで個々にデジタル技術を導入したとしても、足並みを揃えられなければ業務効率化には程遠くなってしまいます。経営陣がDX化の実現に向けてのロードマップや達成へのビジョンを持ち、俯瞰的な立場から各部署の連携を強化していくことが大切です。
現場の意識改革
DX化を現実的に進めていくのは現場の社員です。経営陣が牽引していくだけでなく、社員側のリテラシーやDX化に対する理解も深める必要があるでしょう。
ツールやシステムを扱うスキル部分ももちろん、既存の業務体制を変えるというマインド部分の変容も大切です。世代や部門の違いなどの要因から個々の社員の知識や理解レベルは異なるでしょう。それぞれに合わせたきめ細やかな教育が求められています。
既存システムの把握
すでに一部の業務をデジタル化している場合、新しく導入するシステムとの相性を確認する必要があります。特に既存システムにすでに手が加わっており複雑になっている場合、単にシステムを追加するだけでは既存と新規の良さがどちらも生かせない可能性もあります。
まずは社内システムの把握に努めましょう。もし部署ごとに違うシステムが導入されていた場合は互換性があるか、互換性がない場合は別のシステムで統一できないか検討してみてください。新しいシステムを追加するときは互換性があるかが重要です。
DX人材の確保・育成
DX化は単なるデジタル化とは異なります。デジタル技術を通じた労働環境や目的の根本的な改革には、理念と技術の両面に理解のあるDX人材を確保・育成することが大切になるでしょう。
DXに通じており社内の事情にも理解の深い人材を選出することはもちろんですが、それだけでは人材が不足する可能性があります。研修や教育を通じ、社内全体のリテラシーを伸ばすことも視野に入れましょう。
段階的な取り組み
DX化は全てを一度に進めることはできません。そこでまずは一部の事業への導入など、スモールステップから始めることを意識しましょう。例えば資料のデータ化やチャットツールの導入は取り組みやすい事項です。
成功を積み重ねることで他部署へ普及させる際のノウハウを積み重ねることができ、社内での理解も深められます。焦らず、一つひとつ成功させることが最終的な成功につながるでしょう。
DXにより業務効率化に成功した企業の事例
コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』は電子化した請求書を送付できるシステムです。『@Tovas』の導入により業務の効率化に実現した事例を以下で4社ご紹介します。
株式会社ティービーアイ様の事例
株式会社ティービーアイ様はセキュリティ事業を中心にシステムの開発や設計、配置、保守サービスなどを提供しています。同社ではもともとFAXを利用して注文書を送信していましたが、午前中いっぱいが注文書関連の業務にかかるなど負担の重さが課題でした。
同社では電子帳簿配信システムを導入することで、注文書をオンラインで送信できるようになりました。これにより、業務にかかる時間の大幅な削減に成功しています。配信漏れもなくなったことで、時間コストの削減だけでなく未送信リスクも解消するなど大きな成果を上げています。
株式会社大日ハンソー様の事例
株式会社大日ハンソー様はコンベヤー部品の製造・技術を中心に、PC製パイプの企画設計販売、昇降機用ベルトの販売などを行う会社です。同社では納品書や請求書の送付作業が日々の作業の負担となっていたため、ペーパーレス化を目標として『@Tovas Master+』を導入しました。
結果として請求書送付の作業時間を60%削減することに成功しました。これには約1カ月という短い期間で取引先の70%が電子送付に同意したことが背景に上げられます。取引先の電子化ニーズも高まる中、帳票書類をスムーズにやり取りできる『@Tovas』の利点が光った事例です。
服部株式会社様の事例
服部株式会社様では旗やPOP製品全般の製造・販売の他、さまざまな生地を使用した商材の製造・販売を行っています。同社では月2,000枚以上の納品書や請求書を2名で郵送していたため、作業負荷の重さが課題となっていました。
作業効率の高さとコスト削減効果を目的として『@Tovas』を導入したところ、作業時間を年間で120時間も削減することに成功しました。同社では納品書や請求書だけでなく他の書類にも電子帳簿でのやりとりを検討しており、ツール導入による効果を実感しているそうです。
富士通コワーコ株式会社様の事例
富士通コワーコ株式会社様は富士通グループの傘下企業で、コンピューター関連用品やオフィス関連用品の販売、間接材全般の調達最適化などを提供しています。同社では業務の効率化とコストの削減を目指し段階的な電子化を進めています。
基幹システムをそのまま存続させるため、導入する分野を見極めて着実にDX化を進めている点が大きな特徴です。地道な取り組みが功を奏し、現在では納品書全体の1/4が電子化、1通当たり100円のコスト削減に成功しています 。
まとめ
バックオフィスDXは働き方改革の推進や人手不足の解消、競争力の強化、業務効率化などに効果が期待されます。具体的にはペーパーレス化やRPAの導入、クラウドサービスの活用などが考えられるでしょう。業務プロセスを確認し、自社に合った形で取り組んでいくことが肝心です。
コクヨの電子帳票配信システム『@Tovas』は、帳票書類を電子化してWeb上で送信、郵送できるクラウドサービスです。電子データでの送付ができる他、取引先の要望に応じてFAX・郵送と送付手段を柔軟に変えて送信も可能です。帳票書類の発行や電子帳簿保存法に対応した送付後の帳票管理もできるため、経理業務の効率化にぜひご活用ください。
@Tovasマーケティング担当(コクヨ株式会社)